青池保子『エロイカより愛をこめて』26巻 秋田書店 2000年

 「ロシアにはNATO海軍の半分を無力化する作戦が存在する」という極秘情報――それが,バルト三国のNATO加盟の「手みやげ」だった。しかし,いったい誰が,どのようにしてNATOに伝えるのかは,いっさい不明。エーベルバッハ少佐は,その情報を入手するため,デンマーク・コペンハーゲンで開かれるNATOとバルト三国の会議に潜入するが・・・

 なんだか,むちゃくちゃひさしぶりの『エロイカ』26巻,「NO.19 ポセイドン2000[Part.1]」です。25巻の感想文をアップしたのが,1999年6月29日ですから,じつに1年4ヶ月ぶりです。連載の方は休載していたのでしょうか・・・秋田書店は,書誌情報を載せないからなぁ・・・う〜む・・・

 さてそれはともかく,冷戦終結,ソ連崩壊にともなって,「友好国」となったロシアの「仔熊のミーシャ」と,心ならずも(笑)共同作戦をとらざるをえなかったエーベルバッハ少佐ではありますが,今回は,ロシアの極秘情報をめぐって,ミーシャとひさびさにがっぷりと四つを組みます(現実のロシアではプーチンという旧KGBのおっさんが大統領になって,「強いロシアの復興」を標榜してますので,今後はこんな展開が,復活するかもしれませんね)。
 ところが,そのミーシャ,経費削減のあおりを喰らって,なんとも情けない状態。デンマークの下町のぼろいアパートの屋根裏部屋で自炊生活,尾行ももっぱらレンタ・サイクル,部下は分別ゴミの出し方で,近所のおばちゃんに説教されるという体たらく・・・かつての「栄光のKGB」の姿は今何処,といったところです。思わず,「ミーシャ,がんばれ!」と声援したくなります(笑)。
 そうそう,ミーシャといえば,これまでちらりとだけ出てきた娘さんアンナが,はじめて登場します(それと奥さんも)。本編の重要なキャラクタであるデンマークのバレエ・ダンサー,ジリー・コスビーに夢中になる彼女を口では叱りながらも,彼女のために,ジリーのヴィデオを手に入れようとする親バカぶりが,なんともかわいいです(笑)。

 そのジリー・コスビーに夢中なのがもうひとり,そう,伯爵であります。彼の招待でデンマークを訪れた伯爵は,そこで少佐とばったり。今回は,仕事がらみではないので,相互不干渉を約束。とくに少佐側は,伯爵は「透明人間」ということで徹底的にシカトしまくります。部下との打ち合わせに口を挟む伯爵に,まったく揺るぎない態度をとる少佐は見事です(笑)(それにしても,少佐のいう「おちゃらけた透明人間」って,どんなんでしょうね。想像すると笑っちゃいます)。
 しかし,ミーシャの無線を傍受して,ジリーが諜報戦に関わっていると誤解した少佐は,伯爵を巻き込み,バルト三国の代表団を探らせます。やっぱり,こうこなくちゃ,ですね。で,その変装が,伯爵の美意識とは正反対の「お掃除おばちゃん」「似合うぞ,絶品だ」という少佐の憎まれ口に,「こんな女にしたのはあなたよ」という伯爵の切り返しには,吹き出してしまいました。

 いったい極秘情報を持ってくるのはいったい誰なのか? ハゲで被害妄想のペッツか,それともローザマルタか,はたまたダークホースのジリーか,まだまだ少佐とミーシャの戦いは,先が読めません。

00/09/29

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