和田慎二『怪盗アマリリス』9〜14巻 白泉社 1994〜1996年

 謎の密売組織「黒いオークション」からアマリリスの首に1億ドルの懸賞金がかけられた! つぎつぎと彼女に襲いかかる凄腕の殺し屋たち。次第に明らかになる「黒いオークション」の正体・・・孤島で繰り広げられる最終決戦の結末は如何? そして海とのロマンスの行く末は?

 芸能界デビュウ,映画製作と,作者の趣味が全開していた本シリーズではありますが,ここへ来て,ある意味「怪盗としてのアマリリス」の本来の姿に回帰したと言えるかもしれません。話をひたすら大きくするところは,この作者の趣味といえば趣味でしょうが・・・。もうちょっとワン・エピソード風の「盗みネタ」を読みたかったところですね。

 さて,アマリリスと対決する「黒いオークション」の殺し屋たちなのですが,「をいをい,どっかで見たことあるぞ」といった感じですね。たとえば爆弾魔のジュニア,高性能爆薬のテープを飛ばして爆発させるという「技」は,その昔,永井豪『あばしり一家』吉三が使ってたのとよく似てます(「パラノイア学園編」でしたでしょうか?)。また毒の女・ミザリーや,針金使いのB・ベニーとかも,あろひろし『シェリフ』『ハンター・キャッツ』に出てきた「四龍(スーロン)」の殺し屋たちとの共通性が見られます。それに,敵を倒しながら,頂上のボスにたどり着くというパターンも,『ドラゴン・ボール』ですしねぇ・・・そんなこんなで,いまひとつ新鮮味が感じられなかったのが残念です(でもミザリーのキャラクタはけっこう好きだったりします(^^ゞ)。

 個人的にうれしかったのが,八雲くんの意想外な活躍でしょう(笑)。巨悪に滅私奉公で仕えながらも,主人公に滅茶苦茶にやられたり,巨悪が危うくなるとあっさり切り捨てられたり,といいとこなしの八雲くんでしたが,今回は,サド系上司のアンナ=島村を見事に出し抜いて,トップに返り咲きました。でも,「黒いオークション」が潰れて,彼はこの先どうなるんでしょう? 新しい巨悪を探して,再就職活動中でしょうか? この不景気で「悪の業界」も大変かもしれませんが(笑)。

 それと,アマリリスと海とのラヴ・ロマンスですが,この作者にはめずらしい^^;;ハッピィ・エンドでしたね(キス・シーンはなんとも愛想がありませんでしたが・・・アマリリスの手が震えているあたり(笑))。イヤリングの使い方も巧かったですしね。あとは,明日香一也ですね。いったい作者はどうするつもりなんでしょう?

 関係ないですが,一番笑ったのが,窃盗団グループ「花蓮」のボスのお茶目なセリフ,「ガッツだ!」です(^^ゞ

98/05/15

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