浦沢直樹『20世紀少年』5巻 小学館 2001年

 2000年12月31日−20世紀最後の日,“ともだち”による世界同時多発テロがついに開始された。ケンヂの呼びかけに応じて集まった7人の「20世紀少年」たちは,“ともだち”の陰謀を阻止するべく立ち上がるが・・・

 ををっとぉ! そうきたかぁ!!

 ・・・という驚きの急展開です。
 いや,じつは,物語の舞台が途中から,2014年という近未来にシフトするという話は,掲示板でさかえたかしさん@発言者より一言から教えていただいていたのですが,そのときは,てっきり「予定通り,20世紀中に完結できなかったから,設定を変更したのかなぁ」などと失礼千万なことを考えていました^^;;

 ところがぎっちょん!(死語) やはりおそるべきは浦沢直樹。一筋縄ではいきません(<褒め言葉)

 1巻冒頭,ニューヨークの国連本部で,20世紀末に「人類を救った」人々が紹介されます。その後の展開を考えれば,そのとき顔を見せることのなかった「彼ら」とは,主人公ケンヂたちであると誰もが想像するところです。つまり「物語のフィナーレ」を冒頭に描くことで,テーマを明確にし,その終幕に向けてどのようにストーリィが進むか,人類にいかなる災厄が襲いかかり,ケンヂたちはいかにしてそれを打破していくのか,という興味を盛り上げるための典型的な物語手法のひとつだと思われたわけです。
 ところが,本巻途中で挿入された同一シーンと後に続く展開を見るとき,このシーンはまったく異なる意味を持ってきます。そう,“ともだち”が仕組んだ世界同時多発テロは,彼らの陰謀により「ケンヂ一派」が引き起こしたものとされ,恐るべきテロから「人類を救った」という名誉は,どうやら“ともだち”に帰せられているようなのです。そして“ともだち”は,「救世主」として日本を支配している・・・・
 しかも,やはり1巻に登場した謎の少女が,成長した,ケンヂの姪遠藤カンナであることから,この展開が作者が途中で思いついたものではなく(<ますます失礼な!^^;;),物語最初から予定されていたものであることは明白です。
 つまり「物語のフィナーレ」と思われていたシーンは,じつは「物語のオープニング」だったのです。ミステリで言えば,見事なまでのミス・リーディング! いやぁ,まいりました。脱帽です。

 しかし,ある意味,正念場はこれからであると言えましょう。20世紀最後の日,“ともだち”の巨大ロボットへ戦いを挑んだケンヂたち。そのうち瀬戸口ユキジのみが,カンナの養親として,2014年に登場しています。しかしほかの人々はどうなったのか? ケンヂは? そしてオッチョは?
 また,5巻ではまだ“ともだち”がどのように日本を支配しているのか描かれていません(言論や表現に対して厳しい規制をしているらしいことは匂わされていますが)。さらに1巻でカンナは,巨大ロボットを見つめてこう呟いています。
 「まさか,またアレが・・・・」
と。ならば,ふたたび悪夢が地球を覆うのでしょうか? そのとき「20世紀少年」たちはどのような戦いを試みるのでしょうか?
 う〜む・・・すっかり作者の術中にはまっています(笑)

01/05/05

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