朝 礼 訓 辞
平成25年12月2日
去る11月16日、熊本に行きました。大学卒業50数年の同窓会が開かれ、恐らく最後になるだろうと言うことで、とても複雑な気持ちで家内と一緒に参加しました。 卒業は約80名くらいでしたが、20名近い方が亡くなり、いろんな都合や体調が悪かったりで約20名が欠席、出席者は40名ぐらいでした。 各自、近況報告をするようにとのことでしたが、驚くほど多くの方が癌で手術をした、心筋梗塞でバイパス手術をした、ペースメーカーを付けている、脳卒中で片マヒや言語障害のある人、杖をついている人、まるで病状報告のようでした。 10年後、20年後、果たしてこの中で、何人の人が生きているのだろうかと、とても侘びしい気持ちになりましたが、反面、旧交を温め、50年前の大学時代を懐かしんで帰って参りました。 同窓会の始まる前に、時間がありましたので、家内と二人である男性に会いに行きました。その方は私の家内の元彼とも言えるような男性で、家内が学生時代に、ボランティア活動で知り合い、お付き合いしていたと言うことでした。 実はこの方は、熊本の菊池恵楓園というハンセン氏病の収容施設で生まれられたのです。来予防法に基づいて直ちに生まれてまもなく、未感染児と言うことで、両親から引き離され、乳児院に預けられ、小学校、中学校と両親の顔も知らぬまま育てられ、中卒後、自動車の整備士になり、社長夫婦にとても大事にされました。 頭もよく、まじめで、仕事熱心で社長に認められ、自分の塗装工場を経営するまでになりました。 恋愛もし、ある女性と結婚し、幸せな家庭生活でしたが、ある日、突然、運命が変わります。胆嚢癌にかかり、脳卒中を起こし、工場も閉鎖し、奥さんには脳梗塞で先立たれ、今では1DKのアパートに一人住んで、月5万円の年金生活とのことでした。 最近になり、さらに追い打ちをかけるように、膀胱癌にかかり、膀胱を三分の一切除し、今ではあまり水分が取れないと言うことでしたが、3人で喫茶店でお茶を飲みながら、いろいろ話を聞かせてくれました。 言うなれば、失礼かもしれませんが、フーテンの寅さんとマドンナのような関係で、私は学生時代に1度、あったことがあり、今回が2度目の対面でした。 見るからに顔色も悪く、体もきつかったと思いますが、30分くらいの面談の終わりに、今までは死に対する恐怖心などなく、明るいあこがれがあると話してくれました。 それは生まれて一度も見たことのないご両親に会えるという希望の心ではないかと思いました。 同窓会もすんで、帰島してから、まもなく彼から家内に電話があったそうですが、貴女のご主人は良さそうな人だったので、ぼくはとても安心したということだったそうです。 つまらない話で申し訳ありませんでしたが、今年最後の月になりましたが、今月も健康に留意して、患者様のことを思いやり仕事に励んで下さい。 |
医療法人純青会 せいざん病院 理事長 田上 容正 |