その9


お伊勢講行事 (oiseko) 
お伊勢講・疱瘡踊りは県指定無形民俗文化財

 
大浦町・平原(おおうら ひらばる) 疱瘡踊り

鹿児島県南薩摩地方では、お伊勢講の行事・祭りが比較的多く残っている。
昔はお伊勢参りに個人で出かけるのはとても無理で、みんなから少しづつ集めたお金をプールし
くじ引きや輪番で、代表が参拝する講という組織を作った。関東でも、富士講という組織があって
富士登山するための組織・団体のようなものがある。この講とは本来は講話に代表されるよう、
仏典講説の為の僧の会合とか、寄り合いのことを言ったもの。ネズミ講と言うのもある。鹿児島の
一部で、今も、”おんな講”という、年1回主婦をねぎらうための行事がある。 地域社会を母体に、
信仰・経済などの集まりをこの講と呼んでいるのだ。この伊勢講は、だんだんお伊勢参りよりも、
集落の祭・行事として定着し、リクリエーションの少なかった昔の、村の楽しみの一つとして残って
いったのではないだろうか。それには、信仰を崇拝し五穀豊穣を祈り、元服行事としても利用したり
いろんな要素が入り、伝承されたもの。たまには焼酎も飲ンタカ、踊っもオドイタカといった気運の
盛り上がりもあったのだろう。各集落の古老に何人も聞いたが、由来・歴史を詳しく知っている人は
少ない。ただ、昔から受け継がれて、それを行っていると言うだけが多かった。
                 

川辺郡大浦町には、小さな集落毎に、お伊勢講行事が残されている。
毎年2月11日に、それぞれの集落で、それぞれ別々の行事がはじまる。
平原(ひらばる)集落

公民館に集まり神様にお祈りをし、お神酒を飲み  さかきで、それぞれがお払いをする。

男踊り・鎌、鉈踊り 公民館庭で 公民館室内で・疱瘡踊り(ほうそうおどり) 公民館室内で・女踊り


大木場(おおこば)集落 鬼化(おんけ)
大木場のオイセドン行事は、山岳登山からはじまる。集落の南に岩の特異な格好をした磯間岳がそびえる。
代表したニセ(青年)どんが朝、この山と、長屋山に登る。もちろん、信仰登山で、お参りをし、公民館に戻る。
午後からは、お伊勢さんを先頭に、思い思いに変装した「おんけ」が集落を一周し、また、地域公民館に戻る。
昔は、お伊勢さんは各人の家に持ちまわりだったそうだが、人口減などのために、集落の公民館に安置している。
おんけは女性だけがなり、二人で1組に、竹や棒で通した一斗缶を担ぎ、手には榊を持ち、その榊で見物人などが
なでられるとご利益があると言われている。婦人会は強制的参加・なんて、ショチュでヨックロタobasanがちらっと
ヨックロワナ コゲナ格好ゲンナカッテ ヤッチョレン。洩らしてくれた。お伊勢さんを持ち運ぶのは、毎年、男性が
担当する。このその年選ばれた男性は、「嫁ジョ」(お嫁さん)と呼ばれて、女装をして、神棚のお伊勢さんを持つ。

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榊(さかき)集落
海岸に近い支流域にある。ほかの集落は午後からの行事がほとんどだが、ここは朝9.00から始まる。
(大木場の山岳登山行事は除く)
午前は地域公民館で、疱瘡踊りがスタートだ。この疱瘡踊りは、県の民俗文化財に指定されている

疱瘡「ほうそう」がむかし流行、亡くなる人が多く、お伊勢参りの時に、この病気の快癒、病が無くなる
ように、お参りをしたと言うところから、踊られるようになったとの話だ。榊集落の古老から話を聞く。


榊集落 右手後方の山は野間半島最高峰野間岳

午後からの行事 棒踊り 榊集落の棒踊り 集落を回り、数ヶ所で踊り披露


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