佐藤雅彦『プチ哲学』(2000年・マガジンハウス) |
最近、胡散臭い心理学の本同様、「よくわかる哲学」みたいな本を多く見かける。ボクもそういった本から入ったクチだから、あんまり偉そうなことは言えないけれど、未だに(一部の人たちには)「哲学」って「何なのか知ってみたい」、「格好良さそう」みたいな信仰が残っているのかもしれない。それとも自己啓発書みたいな感覚なのかな(読んだことないからわかんないけど)。 でもきっと「哲学書」やら「哲学入門書」ってそれ自体は何の役にもたたない。もちろん「知っている」ということを(少なくともボクは)「すごいなぁ」とか「格好いいなぁ」とは思うけれども、じゃあ知っているということがその人の役に立っているかといったら、やっぱりそうとも言いきれない。「言語ゲーム」だの「ポスト構造主義」だのがわかったからと言って、楽しい人生を送れるとは限らないし、知らなくったって豊かな人生を送っている人はきっと大勢いる・・・というかそういうひとが圧倒的に多いに違いない(もちろん不幸な人も同じくらい大勢いるに違いない)。 そして『プチ哲学』もきっと役にはたたない。でも「よくわかる哲学」的な本よりは確実に楽しめる。ここにはちっとも、難しい概念だの定義だのといったものは出てこない。かわいいイラストと解説があるだけ。それはちょっとヒネってあって「なるほど」とか「そうか」と思えるものがいくつかある。 この本には「哲学」や「哲学者」や「思想」なんてものは(表面的には)ひとつも現れてこないけれども、もしかすると「『哲学』する」きっかけを、自分で何かについて考えるというチャンスを内に秘めているかもしれない。 2001/11/19
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・発行年等は手許にある本の表記に従ってあります。 |