竹本健治 Takemoto, Kenji

竹本健治『匣の中の失楽』(講談社ノベルス・1991年
読みたかった本をようやく見つけたシリーズ(どんなシリーズだ 笑)。
ミステリ作家竹本健治のデビュー作(1978年)にして傑作と目される本書は、しばらくの間絶版状態にあったらしいです。「91年」に「講談社ノベルス」から復刻されたことからもわかるように、「新本格ブーム」にのって復活を果たしたみたい。
何をもって「本格」と呼ぶか? それは定義も色々あってはっきりしないんだけど、とりあえず「密室」や「トリック」、「探偵」などといった道具立てを用いた小説だとするならば、もちろん本書もその範疇に含まれるのかもしれない。その意味では帯にあるように「新本格推理の原点【の一つ】」(【】カッコは電脳馬)ともいえるだろう。
しかし、無論それだけで片づけられる作品ではない。本書は劇中劇の連続であるメタ・小説、メタ・ミステリの体裁をとっていて、「果たしてどこまでが現実なのか、そして、どこまでが作品なのかわからなくなる眩暈感」というのが特徴といえそうだ。
こう書くと「あれ、清涼院流水の時とコメントが同じじゃないの?」というツッコミがあり得そう(笑)。ただ、清涼院のほうは、ほとんどむちゃくちゃというか、壊れているといった類のもので、あえていうならば小説とは言えない(まぁ本人が「流水『大』説」と言っているくらいだし)。
じゃあ小説ってなんなんだよ、とか聞かれると実は困ってしまうんだけど(だから何も言えないし、言わないが)、明らかに清涼院よりは竹本の本作品のほうが洗練されているように思える。清涼院はまさに本作を意識して書いているわけで、まさか同じ様なモノは書けないってのももちろんあるでしょう。ある程度はひねらざるを得ないというか(とはいえ相当似ているけど 笑)。
ともあれ「幻の名作」という名に恥じない作品です。ご一読あれ。
2001/3/21

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