笠井潔 Kasai, Kiyoshi

笠井潔『ミネルヴァの梟は黄昏に飛び立つか?』早川書房・2001年
「評論」というものをどうとらえるかってのは人それぞれかもしれない。私の場合、正直「邪道」な感じがしなくもない。これってやっぱり「作品(なり、オリジナル)」が上で、その下に「評論」なるものが、密に群がるアリのように存在しているようなイメージから来ているんだと思う。
でも、私は結構「評論」好きである。(小説など)ある「作品」を単体で楽しむというのはもちろん「正道」であるように思うのだけれど、その「作品」が系統的に、状況的にどう位置づけられるのかを考えたり、それについて考えている文章を読むことが、もしかすると「作品」自体を読むよりも好きなのかもしれない。ちょっと言い過ぎか。ただ、その作品(と作者)を歴史やら状況やら切り離して読み解くことは不可能であるように思うから(ついでに読者も)、評論が全く無意味とも思わないのだ。
さて、本書は、評論家で、思想家で、作家でもある笠井潔氏の時評的ミステリ評論。早川のミステリ誌『ミステリマガジン』の連載が1998年4月号から2000年9月号分まで収めていて、「ミステリ」の現在が論じられる。笠井氏は、基本的に清涼院流水以降の世代(の一部)に対して批判的で、90年代以降のミステリ状況を「セルダン危機」と名付けて、危機感を募らせている。その危機感が本連載を開始させる動機となったようだ。面白い論考もあれば、ちんぷんかんぷんなものの、少々うざったいものもある。最後に収められている綾辻行人氏との対談は非常にわかりやすい。
2001/7/14

・発行年等は手許にある本の表記に従ってあります。
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