山形浩生 Yamagata, Hiroo

山形浩生『新教養主義宣言』晶文社・1999年
すっげーおもしろい。山形さんの思惑(本気がどうかは定かじゃないが、「教養の基盤」をつくりなおすことらしい)はともかく、どれも(本書は論文〈雑文〉集なのだ)かっとんでいるし、書評で取り上げられている本はみんな読みたくなってくる(早速一冊買ってみた)。
ただ、やっぱり読者を選びそうだ。中身についていけないということではなく(それなら私も相当怪しい)、この攻撃的で、悪意に満ちて、人を小馬鹿にしたような、そして差別的で、高慢ちきな文章が(僕は運良く?受け入れることができた)。もちろん、これはこれで芸の一つとみなすべきなのだろう。けれど、これで読者が減ってしまうのは勿体ない気がする。でもやっぱり「節度なき罵詈雑言」のない山形浩生は(私にとって)ものすごくつまんないだろうから、これでいいのだ。
本書は評論家(?)としての山形浩生氏のここ10年間の仕事を集めたもの。本職は確か野村証券系のシンクタンクの研究員、調査員だったかな。しかし、本職と関係しそうなのは、経済の話くらいのもので、大半はネット関連の話や書評(SFが多い。「CUT」に連載されたもの)などだ。そういえば、先日政府や日銀が回避した(よね?)「インフレターゲット」は、本書では(あるいはクルーグマンの本では)推奨されている(みんなに物価が上がると触れて回る→貯蓄してもお金の価値が下がる→みんなが今のうちに金を使ってしまえと考える→景気が良くなる・・・但しインフレは危険、とみなすのが一般的だから政府や日銀はこの政策を取れない)。
前回に引き続き「教養」書。やはり、山形さんも日本人に基礎的な教養みたいなものがないことを憂いている。ただ、僕のイメージだと「そんなもん(バカ・・無知なやつは)ほっとけ」って言いそうな感じなのだが(実際言ってるんだわ)、そうだとしてもやっぱり書いちゃう(まとめちゃう)のね、こういう本を。半分は商売としても。
2001/8/27
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