と学会『トンデモ超常現象99の真相』洋泉社 1997年

 『トンデモ本の世界』『トンデモ本の逆襲』につづく,第3弾です。ただ前2作が,「トンデモ本」を「笑ってしまおう」というのを基本的なコンセプトにしていたのに対し,今回は,トンデモ本でよく見かけるネタ99を挙げ,それを徹底検証したものです。といっても,多くはいろいろな人が検証した結果を紹介したものですが…(別に本書をおとしめるつもりはありません。なああんの検証もなく,出所も明らかにせず,おどろおどろしいBGMと白々しい映像で,怪しげな内容を垂れ流しにしているTV番組に比べたら,はるかにましです)。
 ただこういった「オカルト批判」は「と学会」としては不本意なようで,むしろ作者たちは「オカルト」や「超常現象」が好きで好きでたまらず,世に喧伝されている「オカルト」や「超常現象」のあまりの「でたらめさ」に失望し,「本物のマニア」を目指しているのだそうです。

 UFO,ミステリーサークル,アダムスキー,火星の人面石,アトランティス,ムー大陸,『神々の指紋』,超古代史,フリーエネルギー,キルリアン写真,フィラデルフィア実験,心霊写真,チャネリング,ノストラダムス,ユリ・ゲラー,ダウンジング,ネッシー,バミューダトライアングル,地球空洞説……

 もうとにかく,つぎからつぎへと「トンデモネタ」をばったばったと滅多切りにしていきます。一気に読むと,なんか「そこまで言わんでも…」と,「トンデモネタ」の方に思わず同情したくなるほどです(笑)。こういった「トンデモネタ」には,明らかに人を騙すための「嘘」や「でたらめ」などもあり,例の団体をはじめとする怪しげな宗教団体による,実害をともなった「詐欺」もあるので,手放しには笑えないところもありますが,なかにはちょっとした誤解や曲解が増幅されたり,あるいは,きっかけは小さな「嘘」だったのに,尾ひれがついて,それこそ「とんでもない」話になってしまったものもあるようです。こうなるともうほとんど「都市伝説」と同じです。
 実際,本書では,「トンデモネタ」のことを「伝説」と呼んでます。あらゆる宗教に「正統」と「異端」があり,正統宗教には認知されない「伝説」があるのと同じように,「科学」がわれわれ素人には,ほとんど「宗教」みたいな感覚(「そんなの非科学的だよ」という人に限って,「科学」の基本である「疑うこと」を放棄していたりします)でとらえられている現代においては,やはりその「正統宗教」に対する「異端」としての「伝説」が,いろいろな形で出てくるのも,あたりまえのことなのかもしれません。
 ただ現代では,それらがマスコミという,巨大で強力な増幅装置で,世に喧伝されるという特質があると思いますが。どちらかというと個人的には,ネタそのものよりも,こういった「トンデモネタ」が,どういう心理的・社会的プロセスで,人々に受け入れられたり,あるいは逆に拒否されていくのか,という方に関心がありますね。

 ちなみに鈴木光司『リング』の元ネタになった(と思われる)話も出てきます。

97/03/17読了

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