中島らも『白いメリーさん』講談社文庫 1997年

 奇妙な話,怖い話,不気味な話,わけのわからない話・・・,9編を集めた短編集です。

「日の出通り商店街 いきいきデー」
 今日は年に1度の“いきいきデー”。日の出通り商店街なら人殺しOK! 最初の相手は天ぷら屋…
 まあ,一種の不条理ギャグでしょうね。いろいろな商売が,それぞれの“獲物”で闘うシーンが描きたかったのでしょうか?
「クロウリング・キング・スネイク」
 姉さんが“蛇女”になってしまった。父によれば,我が家の呪いだという。でも姉さんは負けない!
 楳図かずおの“蛇女”は,とり・みきによって“普通の主婦”にされてしまい,この作者によって“スパースター”にされてしまいました(笑)。聖飢魔IIのパロディ?
「白髪急行」
 終着駅から車庫まで走る電車。無人のはずの車内に白髪の少女を見かけた“私”は…
 なにやら不気味でいて,それでいてもの哀しい作品です。「まだよ,まぁだだよ」のセリフがちょっと怖いです。
「夜走る人」
 真夜中に走ることを日課としている“私”は,不良少年に襲われる浮浪者を見つけ…
 冒頭は単なる深夜のジョガーと思いきや,読んでいくうちに「あれ,あれ」と奇妙な雰囲気に。で,オチはというと…。おもしろいんですが,なにやら中途半端な感じもします。
「脳の王国」
 人の心を覗くことのできる乾物屋・加持真平に持ち込まれた依頼は…
 これもネタはけっこうおもしろいと思うんですが,やっぱり中途半端。五感のない少年の心理をもうすこし描いてほしかったですね。
「掌」
 同棲中の相手は月に一度ヒステリー。そのたびに襖に掌の形の染みが浮かび上がり…
 オーソドックスな怪談ですが,最後に「ぞくり」としました。巧いです。ユーモラスな文体も効いてます。
「微笑と唇のように結ばれて」
 恋人のマリカは,“私”の首筋に唇を近づけ,カプリと噛んだ…
 吸血鬼ネタです。映画なんかで,吸血鬼に血を吸われるとき,女性はいつも恍惚とした表情を浮かべますね。“血を吸う”という行為にはどこかエロチックな雰囲気があります。タイトルもいいですね。
「白いメリーさん」
 噂や都市伝説を追うフリーライターの“私”は,一人娘から“白いメリーさん”の噂を聞いて…
 本作品集では一番おもしろかったです。都市伝説の類が好きなせいもありますし,この作者の,どこか嘘っぽい屁理屈もけっこう好きです。ラストが恐ろしく,またもの哀しいのがいいです。ところで“白いメリーさん”って,ほんとに都市伝説にあったんでしょうか? 聞いたこともあるような…
「ラブ・イン・エレベーター」
 たまたま女性とふたりきりで乗ったエレベーター。ところがそのエレベーターは,どこまでもどこまでも上昇を続け…
 これまた不条理な作品です。よくわかりませんが,もしかすると“結婚生活”のメタファ?

97/08/11読了

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