星新一編『ショートショートの広場9』 講談社文庫 1997年

 一般公募によるショートショートを星新一が選んで編集した本シリーズも9集目です。
 文庫本のカバー裏の「解説」「あらすじ」は,いわば「宣伝文句」ですから,多少さっぴいて読むのが普通だと思います。ところが,本書のカバー裏には,「傑作」「粒揃い」「厳選」「珠玉の名作」「超人気シリーズ」と,読んでいてい思わず赤面してしまいそうな「常套句」がズラリ! 宣伝文句とはいえ,こんなに並べられると「まいりました」と頭を下げたくなります(笑)。
 気に入った作品についてコメントします。

西守章憲「滅びゆく日」
 ラストのオチに大笑いしたのち,思わず頭に手をやってしまいました(笑)。う〜む,わたしもそろそろ・・・。
榊恒夫「客」
 散髪屋とその客との奇妙な会話。いったいどんな風に展開するなのだろう,と思っているところに,意外なオチ。楽しめました。
久保祐一「言わずもがな」
 オチがなんとも秀逸です。「わざと俺に失敗させて・・・」のくだりのブラックさがたまりません。
J・M「しゃべる犬」
 よく考えると,ありがちなネタなのですが,話の持って行き方が巧く,オチが苦笑させられます。
森重孝昭「指定席」
 ラストの描き方が少々もたついている感じがしないでもありませんが,発想がおもしろいです。
湯川聖司「どうやって?」
 きっとタケシくんは思いこみの激しいタイプなのでしょうね(笑)。スルリと落ちるラストが小気味よいです。
池田信幸「不審人物」
 どこか不条理風の展開に,ラストは一気にシュールレアリスム。場面を想像するとちょっとユーモラスな怖さがあります。
古賀牧彦「藪の中の二人」
 「他人の不幸は蜜の味」という俗諺をうまいことSF的に処理しています。タイトルがいまいちピンときませんが・・・。
山中久義「尊厳死」
 シニカルでブラックな作品です。「植物人間」に対して「動物人間」という言い回しが笑いを誘います。
御手洗辰男「主人公」
 これもたわいのない話と言えばそれまでですが,書き方が巧いので,ラストの一言が効いてます。
鈴木強「永遠の決闘」
 これは大爆笑してしまいました。巧いです。途中の,けっして不自然でないさりげない一文が,じつに効果的な伏線になっています。
東孝一「電話ボックス」
 妻の殺人計画を効いた夫は・・・,というミステリ色豊かな作品も,本作品集お気に入りの作品のひとつです。

98/04/08読了

go back to "Novel's Room"