山田風見子『シャドウ・ブルー 青の幻影』ハヤカワ文庫 1996年

 草競馬場で起こった狙撃事件。都会でロックシンガーになることをあきらめ村に逃れてきたばかりの榎本鮎子,彼女は現場で,不審な人影を目撃する。そして彼女に頻繁にかかる無言電話。みずからを守るため,推理を重ねる彼女に,情報提供した須藤が続いて殺される。容疑者としてアメリカ人ハンターが逮捕されるが,彼の無実を知る彼女は,単独で調査を始める。が,連続殺人犯「そいつ」の魔手はついに鮎子にも伸び・・・。

 ううむ。なんというかセリフにリアリティがない。鮎子は事件が起こる村に引っ越してきたばかりの「よそ者」で,「この村ではよそ者は排除される」なんて文章がありながら,会話が,みょうに自分を無防備にさらけ出すようであったり,また浅いつきあいの相手の性格を断定するような響きがあったり,と,とても日常会話とは思えません。結局セリフがストーリーを説明するためにのみ,話されている感じで,違和感を感じてしまいます。それから主人公の鮎子の性格設定も,26歳にしては,みょうに子供っぽくて,鼻につきます。まあ,登場人物がみんな幼児的ではありますが。ただストーリー展開はそれなりにこなれているし,後半部のサスペンスもけっこう緊迫感はあります。

97/03/09読了

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