岡嶋二人『珊瑚色ラプソディ』講談社文庫 1997年

 結婚式のためオーストラリアから帰国した“私”を待っていたのは,婚約者・彩子が,旅先の沖縄で盲腸のため入院しているという知らせだった。急遽,沖縄に飛んだ私に,彩子は,同行していたはずの友人・乃梨子が姿を消したという。しかし乃梨子の姿を見たものはないうえ,彩子は男と一緒に旅館に泊まっていたという。彼女は嘘をついているのか,それとも・・・。

 舞台は“石富島”“宇留間島”という架空の島です。石垣島と竹富島がモデルでしょうか? ま,それはともかく,物語は,彩子の“失われた記憶”を手がかりとしながら,姿を消した乃梨子を追う,というマンチェイス・サスペンスです。彩子の,わずかながらに残った記憶と矛盾するさまざまな記録。彩子が乗ったはずの船には乗船記録はない,宇留間島に渡ったはずなのに,彩子は石富島の喫茶店で発病したという,なにより同行したはずの乃梨子は,彼女の母親によれば,青森にいるという・・・・。「結婚前に,別の愛人との最後の旅行をしたのでは」と,疑心暗鬼にかられる“私”の苦悩とともに進む前半部は,なかなかミステリアスで,読んでいて惹きつけられました。また彩子に圧倒的に不利な状況のなかで,“私”を尾行する男,宇留真島で“私”が出会った謎の女などなど,真相への手がかりが,少しずつ少しずつ小出しにされ,物語を引っ張っていきます。そして後半,次第に真相に迫る“私”と彩子,宇留間島でのクライマックスへと展開していきます。さまざまな矛盾や謎を支える“トリック”は,単純といえば単純なのですが,逆に単純であるからこそ,真相解明への流れがスムーズで,すんなり読み進んでいけます。エンディングも,もしかすると「怖い」あるいは「後味の悪い」結末になるのでは,とひそかに恐れていたのですが,“私”と彩子の設定が効果的に用いられており,「なるほど,「オーストラリア」というのは,そういう意味があったのか」と感心してしまいました。

 ああ,また沖縄,行きたくなってしまいました(^^)。沖縄そばのファンなんです,わたし・・・。

97/08/01読了

go back to "Novel's Room"