小森健太朗『ローウェル城の密室』ハルキ文庫 1998年

 奇妙な森に迷いこんだ恵(メグ)と保理(ホリ)は,不思議な老人に出会う。そして「三次元物体二次元変換器」によって少女マンガ『ローウェル城の密室』の世界へと投げ込まれてしまう。メグ・マーシャルとホーリー・ローウェルというマンガの登場人物としての彼らを待ちうけていたものは・・・。

 この作者の作品は,2年ほど前,HP開設以前に『ネヌウェンラーの密室(セルダブ)』を読み,「ああ,もう読まんでもいいな」と思っていたのですが,ふーまーさん@電悩痴帯が,おそらく少女マンガが出ているからでしょうが,「わたし向き」と書かれているのを見て,恐る恐る,半ば「怖いもの見たさ」といった感じで読んでみました。

 きっと,読み終わって,本書を投げつけ,踏みにじり,罵倒する方もおられると思いますが,わたしの場合,読む前から「怪作」「反則技か」といったような噂を耳に(目に?)していたせいでしょうか,「まぁ,こんなものかな」といったところでした。アイディアそのものはそれなりに楽しめました。もうこれくらいのネタでは驚きません(笑)(<西澤効果と言います。などと書くと,「一緒にするな!」と西澤ファンから怒られそうですが・・・)。

 ただこのアイディアは,やはり短編向きでしょう。長篇としてはちとつらいものがあります。とにかくメインとなる事件が起きるのが物語の後半,それまで,えんえんとローウェル城での生活が描かれます。途中,レイク・ローウェルをめぐる女同士の決闘のシーンなんてのがはさまれるものの,はっきりいって単調で退屈です。でもって,ラストでそれら前半のエピソードがきちんと本筋に絡むならともかく,読み終わって,「結局,この長さはなんだったんだぁ」という思いが強く残りました。
 そういった長々とした描写を削って,もっとすっきりとした短編で使った方がよかったんじゃないでしょうか? あるいは長篇にするならば,もう少し別のトリックやネタと抱き合わせにするとか・・・。要するに良くも悪くも「ワン・アイディア・ミステリ」といったところでしょうか。

 でもこれだけの作品を16歳で書いてしまうところは,やはりタダモノではありません。しかしこれからまたしばらくは,この作者の作品を読むことはないでしょう^^;;

98/06/29読了

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