有栖川有栖『ロシア紅茶の謎』講談社ノベルズ 1996年

 「臨床犯罪学者」火村英夫と推理作家・有栖川有栖のコンビシリーズ.いずれも小粒ながら,不可解な謎を火村の推理が明らかにしていくという,6編よりなる本格推理短編集です.

「動物園の暗号」
 深夜,動物園で殺された飼育係.彼の右手には,動物の名前を列記した暗号が握られていた.「動物園で」というところがミソですね.
「屋根裏の散歩者」
 殺されたアパートの大家の部屋から発見された日記には,彼が屋根裏から覗いた住人の生活が描かれていた.そしてその中に連続女性殺人犯の手がかりが.これも一種の暗号もの.解決方法はおもしろいが,途中でネタばれで,いまいち.
「赤い稲妻」
 目撃された女性のマンションからの墜落死は自殺か他殺か.部屋はチェーンがかかり密室状態.彼女のパトロンの妻はほぼ同時刻,列車事故で死亡.夫はアリバイを主張するが・・・・・.火村の推理が小気味よいです.
「ルーンの導き」
 背後から短剣で刺殺された男が握っていたルーン文字の小石.階下の男女の中に犯人がいるはず.では誰か.なるほど,といった感じの佳品.初出誌が笑えます.
「ロシア紅茶の謎」
 5人の男女の見守る中で毒殺された男.誰も彼の飲んだロシア紅茶に毒を入れる機会はなかった.いかにして毒は入れられたか? 想像するとちょっと怖いです.「国名シリーズ」の最初は短編だったんですね.
「八角形の罠」
 作者原案の演劇のノベラリゼーションという変わり種.暗闇の中で刺殺された男優.そして続いて第二の殺人・・・.「読者への挑戦状」付.犯人当てゲームのためらしく,きわめてオーソドックス。

97/02/24読了

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