ロアルド・ダール『王女マメーリア』ハヤカワ文庫 1999年

 「日本オリジナル短編集」だそうです。各編がどういう経緯で集められたのかは不明ですが,いろいろなテイストの作品が集められています。
 気に入った作品についてコメントします。

「ヒッチハイカー」
 ヒッチハイカーを拾った作家“私”は,スピード違反で捕まってしまい…
 ヒッチハイカーの“正体”が明らかにされたところで,オチは見当がついてしまいますが,逆にその「お約束的オチ」が素直に楽しめます。
「アンブレラ・マン」
 その老紳士は,タクシ代の変わりにと高級な絹の傘を母に手渡し…
 疑い深い母親と,一見ジェントルマンに見えつつも,あきらかに怪し気な男との駆け引きがおもしろく読めました。また「老紳士」の手口のせこさが苦笑させられます。
「古本屋」
 莫大な貯金を有する古本屋には,じつは裏の商売があり…
 古本屋の“裏の顔”がなかなか明らかにされないところが,読んでいてじりじりさせられ良いです(笑)。で,その裏商売もまた,なぜかじつにイギリスらしい,という感じがして(<ジョン・ブルに偏見があるらしい^^;;),思わず「にやり」とさせられます。そしてラストのひねりも巧く,本短編集では一番楽しめました。
「外科医」
 サウジアラビアの王子を手術した木訥な外科医に,お礼として見事なダイヤモンドが贈られ…
 良くできたテレビ・ドラマを見るような気のする作品。それを物足りないと感じる人もおられるかもしれませんが,わたしは楽しめました。主人公夫婦のキャラクタがほのぼのしていて好きです。ただ個人的には,ラストで,ダイヤモンドを宝石店に持ち込む男女,というのを先に描いて,そのあと謎解き,とした方が良かったかな,などと勝手なことを思っています^^;;
「王女マメーリア」
 一夜にして絶世の美女に変身したマメーリアは,しだいに残酷な性格になり…
 この作品と,その前の「王女と密猟者」は,ともに大人の童話として書かれた作品,いわば寓話だそうです。この作品は,こういった「奇妙な味」にありがちな「善意がもたらす皮肉な結末」かと思いきや,最後の最後でもうひとひねり,思わずうなってしまいました。巧い!

99/02/09読了

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