仁木悦子『みずほ荘殺人事件』角川文庫 1979年

 古本屋で見つけました。仁木悦子を読むのは,ずいぶん久しぶりです。仁木悦子というと「仁木兄妹もの」の本格推理がイメージとして強いですが,この作品集は,本格ものも含めて,各編それぞれにいろいろな味わいがあり,仁木悦子の別の側面を見たように思いました。ただ出来は,玉石混淆といった感じですね。

「みずほ荘殺人事件」
 アパートみずほ荘で起きた殺人事件。直前に目撃された不審な人物。アパートの住人にはみなアリバイがある。犯人は外部犯か内部犯か?古い作品なので,トリックというか謎解きは,いまいちピンときませんでした。
「死を呼ぶ灯」
 骨董屋で妙に惹かれて買った古いスタンドを買った男。それを母親に見せると,彼女は異様に驚き,そしておびえる。不審に思った男がその出所をたどっていくうちに・・・.わたしの好きな「自らの過去の探索もの」です。
「肌さむい夏」
 帰省の途中,浪人時代に住んでいたアパートに寄った「おれ」は,そこで世話になったおばさんが,殺人犯として逮捕されたことを知る。信じられない「おれ」は独自に捜査を始めるが・・・。ミステリとしてはいまいちですが,犯人とおばさんの対称的な振る舞いが,おもしろいです。
「あの人はいずこの空の下に」
 テレビの人捜し番組「あの人はいずこの空の下に」で紹介された人物は,近くの米屋の従業員だった。しかしテレビ局が訪ねた翌日,彼は姿を消して・・・。主人公は小学6年生の「僕」。なにやら子供の冒険ものみたいな,ほのぼのとした作品。
「最も高級なゲーム」
 ある屋敷に集まった探偵小説好きの5人。恒例の「犯人あてゲーム」が終わった後,突然屋敷の電気が消えて・・・。なんだかピントが絞れてない作品だなあ。
「老人同盟」
 公園の日溜まりで,日がな一日,昔話と嫁の悪口を繰り返す老人たち。そこに警察に追われる,ひとりの若者がやってきて・・・。ユーモアミステリという感じです.赤川次郎だったら,きっとシリーズものにしてしまうでしょう(笑)。

97/93/06読了

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