はやみねかおる『魔女の隠れ里』講談社青い鳥文庫 1996年

 旅と料理の情報誌『セ・シーマ』からの依頼で,夢水清志郎は,旅先の食事に釣られ,「名探偵夢水清志郎の謎解き紀行」を連載することに! 取材旅行には,当然,岩崎三姉妹もついていくのだが,一行は行く先々で不思議な事件に巻き込まれ・・・。

 さて,ようやく手に入れた「名探偵夢水清志郎事件ノート」の第4作は,夢水の「食いだおれ紀行」,いやさ「謎解き紀行」をおさめた2部構成です。
 「第1部 消える足あとと幽霊シュプール」の舞台はスキー場のA高原。哀しい伝説を持つ“雪霊(ゆきだま)の藪”で消える子どもの謎と,スキー場定番のミステリ“木をまたぐシュプール”に夢水が挑みます。ま,どちらも推測できるトリックではありますが,消えた子どもの謎を解くときの条件がいいですね(“おまんじゅう”じゃありませんよ(笑))。

 で,1部と2部の間に,「休憩 羽衣母さんの華麗な一日」がはさまれます。一見平凡な主婦のようでいて,じつはやっぱり平凡な主婦だったという(笑),岩崎三姉妹のお母さんのエピソードです。でも教授の扱い方は,「この娘らにしてこの母あり」という感じですね。教授の推理はちょっと強引でしたが・・・。

 さて「第2部 魔女の隠れ里」では,『セ・シーヌ』の編集者・伊藤真里,岩崎三姉妹,そして夢水が,村おこしのために「推理ゲーム」を開くという笙野之里を訪れます。ところが何者かにより大量のマネキン人形が送られてきて,さらに不気味な「魔女」のメッセージが届きます。さらに20年前,この笙野之里では,不可思議な人間消失事件が起きており・・・,というエピソード。
 じつは犯人は冒頭でわかってしまったのですが,用いられているトリックのいくつかは楽しめました。とくに,岩崎三姉妹が夜中に目撃した「空を歩く魔女」のトリックは,「これを使ったんだろうな」というところまではわかったものの,最終的なツメまでにはいたらず,「やられたっ」という感じでした。
 またエンディングもいいですね。こういったラストで「理」に落ち(ミステリだからあたりまえですが),なおかつ幻想的な雰囲気で終わらせる作品というのは,けっこう好きです。
 それと,このエピソードには,「夢水が解決しない事件」が描かれており,それが読者に対する「推理ゲーム」となっています。こういったところにも,ジュヴナイルとはいえ,ミステリ作家らしい「稚気」があらわれていて,楽しいですね。
 さぁ,ぼくたち,わかったかなぁ???(<って,誰に言ってる?)

 それにしても,この作品を読んだ子どもたち,後年,梶井基次郎の「桜の樹の下には」とか読んだりしたら,どんな風に思うんでしょうね^^;;

98/09/09読了

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