高橋克彦『幻少女』角川ミニ文庫 1997年

 11編よりなる短編集。なかには4〜5ページの掌編もあります。いくつか面白いもの(「色々な世界」「雪の故郷」など)もありましたが,あいかわらず「記憶」と「東北」にこだわっているなあ,という感じです。それからこの作者はほんとうに「霊」の存在を信じているのでしょうか? 「霊」を信じるかどうかは,人それぞれですから,かまいませんが,それが全面に出ているような小説(「埋められた池」とか「心霊写真」とか)はちょっと鼻白んでしまいます(景山民夫の作品にも似たようなのがありましたが・・・)。

 ところで「珠玉ホラー短編集」という副題(?)がついていますが,幻想譚や綺譚,不可思議で奇妙な味わいをもつ小説,さらには人間の情念や狂気を扱った「変格」推理小説と呼ばれていたものまでを,いつから「ホラー」という言葉で一括してしまうようになってしまったのでしょうか? 角川ホラー文庫で,赤江瀑の作品が「自選恐怖短編集」として編まれたのを見て,「え,赤江瀑ってホラーだったの?」と思わず,首を傾げてしまいました。この高橋克彦の作品集も,もちろん「ホラー」と呼んでもいい作品(「大好きな姉」)もありますが,幻想味豊かな作品(「電話」など)や,むしろ綺譚といったほうがいいような奇妙な掌編(「幻のトンネル」「機械室の夢」)も含まれており,これらをすべて十把ひとからげで「ホラー」というレッテルを貼ってしまうことに,どうしてもためらいを感じてしまいます。自分自身も「ホラー小説」とか「ホラー映画」とかいう言葉を,少々安易に使ってしまっているような気もしますが,あんまり「ホラー」という言葉というかレッテル(とくに売るための)を使ってしまうのは,個々の作家のもつ特色をかえって失わせてしまうのではないか,などと考えました。

 今回初めて「角川ミニ文庫」というのを読んでみましたが,文章同士がつまっていて,ちょっと読みにくいですね。

97/03/11読了

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