飯野文彦ほか『蚊−か−コレクション』電撃文庫 2002年

 プレイステーション2のゲーム「蚊−か−」のノヴェライゼイション(?)作品。タイトルそのもの「蚊」をモチーフとした短編6編を収録しています。ゲームはまったくやりませんが,このゲームのCMを見たとき,「けったいなゲームが出たなぁ」と思ったのを覚えています(笑)

田中啓文「赤い家」
 密室で発見されたのは女と雌蚊の死体。そしてダイイング・メッセージは「赤い家」…
 本書の性格からして,「蚊」を主人公にした作品があることは予想できないわけではありませんが,その「蚊」が人間と同じ程度の文明を築き,なおかつ人間と共同で殺人(殺蚊)事件の謎を追うという設定は,いかにもこの作者らしい「人を食った」ものですね(笑) 十八番のダジャレもたっぷりと堪能できます。
田中哲弥「か」
 元ヤクザのセールスマン・政義が,「蚊」を潰す人間に暴力をふるう理由は…
 う〜む…どうもお話の「焦点」みたいのがはっきりしない作品です。死んだ妹が「蚊」になったと思いこんでいる主人公という設定から,後半への展開が,いまひとつしっくり繋がっていないような感じがしますね。主人公を擁護する上司も,扱いが中途半端です。
小林泰三「刻印」
 蚊の姿をしたエイリアンが,“僕”の部屋のトイレに現れ…
 人間と,等身大の「蚊」との××シーンは,かなり不気味だぞ!(正直,どうすれば「できる」のか,皆目見当もつきません^^;;)。ただ「その結果」からの話の運び方はおもしろいですね。なるほど,あの「種族」はこうして生まれたわけですね(笑)
牧野修「虫文」
 蚊が壁に奇妙な「文字」を書いているのを見て,男は意識を失い…
 「蚊」という文字は,「ぶん,ぶん」という蚊の羽音が元になっているそうです。その「文」を(文字通り)「文字」と強引に(笑)解することで,ヒロイック・ファンタジィ(?)を創りだしています。ただ設定が大がかりだけに,このヴォリュームではやや詰め込みすぎの感があります。
森奈津子「タタミ・マットとゲイシャ・ガール」
 刑罰として,ヴァーチャル世界で「蚊」になった女吸血鬼は…
 いまでもときおり見かけそうな「外国人に曲解された日本」のパロディしながら,例によって妄想を全開させています(笑) ラストで明かされる基本設定は,本集中,一番おもしろかったですね。元となったゲームの「裏設定」という感じもします。
飯野文彦「訪問者」
 自宅を訪ねてきた部下は,その姿同様,異様な話をはじめ…
 本集中,もっともオーソドクスな怪談です。娘が目撃する「ストロー」は,映像的になかなか不気味なものがあって良いですね。ただ「なぜ蚊なのか?」がはっきりしないせいか,ちょっと怖さが伝わってきません。

02/03/07読了

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