かんべむさし『百の眼が輝く』光文社文庫 1997年

 9編よりなる短編集,文庫オリジナルだそうです。惹句に「傑作ホラー小説」とついてますが,ホラーあり,スラプスティックあり,ナンセンスあり,SFありの,いろいろな味わいが楽しめる作品集です。気に入った作品のみコメントします。

「不倫の報酬」
 友人から聞いたセックス好きの人妻。思い切って電話したところ,うまい具合にことは進んだのだが…
 「それじゃ,いままでのは…」という感じで,最後のくるりと世界が反転するオチ。こういう作風の作品は好きです。
「百の眼が輝く」
 会社のふたりの女性社員。様子のおかしい彼女たちを尾行した男は,奇妙な神社へと行き着いて…
 学生の頃,学生食堂で夕飯を食べていたら,突然の停電。冬の日だったのであたりは真っ暗。そんなとき,まわりで食事している学生たちの眼が,暗闇の中でいっせいに光り出したら怖いだろうなぁ,と思ったことを思い出しました。まあ,話としてはいまいちだったのですが,似たようなイメージだな,と思って…
「数々の不審」
 「えらいやっちゃなぁ」と周りから言われる友人。そんな友人がある大事件に巻き込まれて…
 いったんオチがついたように見えて,最後にもう一オチ。いいですね,このラストは。苦笑させられましたが,どこかさわやかです。本作品集で一番楽しめました。
「傷,癒えしとき」
 新しい会社に移って1ヶ月半。澄子は仕事中,原因不明の不安感を感じるようになり…
 不安感の原因を自分の過去のトラウマに求める「深層心理もの」風に展開するのですが,最後になって,もうひとひねり。主人公の最後の言葉が印象的です。
「髑髏パン」
 パーティで知り合った男から聞いた学校怪談。その話はもう数十年伝わっているという…
 「男」の話す能書きがちょっと鼻につきますが,こういった都市伝説ものは基本的に好きです。パンじゃないんですが,子供の頃,似たような話をわたしも聞いたことがあり,心底おびえたことがあります(笑)。

97/11/13読了

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