田島照久『ホラー・マーケット』幻冬舎文庫 1997年(^o^)

 「ワン・アイディア・ホラー」といいますか,「一発芸」といいますか,「ホラー小咄」といいますか,29編よりなるホラー掌編集です。この人の本職は,グラフィック・デザイナーのようで,作中に奇妙な雰囲気のコンピュータ・グラフィックが50枚,挿入されています。へんに話をふくらませていないので,ボロが出ず(失礼),コンパクトにまとまっていて,楽しめました。気に入った作品をいくつかコメントします。

「祖母の家の階段」
 オチに「にやり」とするとともに,するりと恐さが忍び寄ってきます。
「偶然のエアライン」
 これも一種の「落とし話」なのでしょうが,皮肉っぽい結末が好きです。
「アンティックカメラ」
 『どらえもん』的な発想ですが,ブラックなところがいいです。
「下山道の人影」
 オーソドックスな怪談風です。落ちが見えても,それなりに味わいがあります。
「背後のシュプール音」
 これまたオーソドックスな怪談ですが,最後のシーンが不気味です。想像すると恐いです。
「天井の傷」
 “鏡”をもってくるところが,ひねっています。
「ファイナル・ディール」
 結末での,作家の背後からの描写と,主人公の心理が秀逸です。
「即興の作り話」
 余韻をもったエンディングが,ミステリ風でいいです。
「残業」
 これもオーソドックスな会社怪談ですが,「ぞくり」ときました。

97/08/24読了

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