R・L・スタイン『恐怖のヒッチハイカー』集英社文庫 1997年

 フロリダに遊びに来たテリーとクリスティーナは,その帰途,ヒッチハイカー,ジェイムスを拾う。ところがジェイムスが短気で暴力的な性格であることがしだいに明らかになり,そしてカーラジオからは,ヒッチハイカーによる殺人事件のニュースが流れてくる・・・。

 けばけばしいカバー表紙に買うのを少々ためらったのですが,「全米ベストセラー・ホラー」という帯の惹句にひかれ(騙され?)買ってしまいました。この作品に限っていえば,ホラーというより,サスペンスですね。アメリカの低予算サスペンス映画のノヴェライゼーション,あるいは日本でいえば「土○ワ○ド劇場」といった感じです。それなりに伏線は引いてありますし,結末もツイストを効かせてはいるのですが,オーソドックスというか,ワンパターンというか・・・。ヒロインは対照的なふたりの若い女性,ヒッチハイカーはハンサムな青年,そして彼らをつける謎の車,とまあ,ありがちな設定ですし,サクサクと読んでいけるのですが,ついつい先読みできてしまう展開です。そして緊張感のある場面の「引き」が,あまりにあざといです。しばしばホラー映画などで,不穏で緊張感のある場面(闇からの物音,不気味な影などなど)が描かれ,それが猫がたてた足音だったり,不気味な影は友人の影だった,という展開でほっとさせるシーンがありますが,この小説でもその方法を踏襲しています。そういった場面は,それなりに物語に緊張感を与え,効果的に使えば,けっこうおもしろいと思うのですが,この小説のように,それが何回も繰り返されると,正直なところ,うんざりしますし,馬鹿にされているような気さえします(被害妄想?)。結局,設定,展開,クライマックスが,ステレオ・タイプなんですね。まあ,ステレオ・タイプの小説の方が「ベストセラー」になるのでしょう。

 でも,いつから「ベストセラー」という言葉は,「ステレオタイプの読み捨て小説」と同義語になってしまったんでしょうか?

97/06/25読了

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