はやみねかおる『バイバイ スクール―学校の七不思議事件―』講談社青い鳥文庫 1996年

 7月21日,わたしたちの通う大奥村小学校が廃校になる最後の日,ポンポコリンこと校長先生は,わたしたちに“学校の七不思議”の話をした。わたしたちは誰も信じてなかったけど,なんと,その“七不思議”がわたしたちの目の前で本当に起こってしまったのだ!

 「名探偵夢水清志郎シリーズ」ではない,この作者の作品を読むのははじめてです。
 舞台は山奥の小学校,この夏を最後に廃校になる学校です。その学校に伝わる“七不思議”―「校庭の大岩が歩く」「絵の中の少女の数が増える」「花壇の花が血の色に変わる」「14段の階段が13段に減る」「理科室の骸骨が踊る」「ボールがひとりでに階段を登る」「プールに女の人の顔が映る」が実際に起こり,その謎に主人公の少年少女たちが挑みます。

 まぁ,この作者のジュヴナイル・ミステリに対して,トリックの斬新さや複雑さを求めるのは,野暮というもので,むしろ,ジュヴナイルだからといって,けして手を抜かない,フェアな本格ミステリ作法を評価すべきなのでしょう。もちろん「見え見え」のものもあるとはいえ,ちょっとした会話や行動にさりげなく埋め込まれた伏線の周到さには敬服します(個人的には,「先生という人種は,言い方がとてもうまい」というところが好きです)。ジュヴナイルの場合,文章をシンプルにする必要がありますから,ある意味,伏線の張り方は,一般の小説より,かえって難しいのではないかと思います。ですから,虚仮威しでない「読者への挑戦状」をきちんと挿入できるジュヴナイル・ミステリというのは,やはり凄いことなのではないでしょうか?

 それにしても,挿し絵が吾妻ひでお・・・たしかに可愛いですけどね・・・この人の「邪悪な顔」(笑)を知っているものとしては,素直に「可愛い」とは言えないような・・・^^;;;(<かえって邪悪?)。

98/05/04読了

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