ここの感想文はネタばれですので,ご注意ください!!

宮部みゆき『夢にも思わない』Cノベルズ 1997年

 島崎が,事件の裏側を推理するきっかけは,
「なぜ,中学生には見えない森田亜紀子を“僕”(=緒方)がクドウさんと間違えたのだろうか」
という疑問だったと思います。
 で,その疑問を解決する鍵は,死体が発見されたときの「中学生ぐらいの女の子ですよ」という,白河庭園で最初に叫びをあげた人のセリフです。
 島崎は,このセリフから,「亜紀子以外に,死体と間違われるような状況で,もうひとり誰かがいたはずだ」と推理します(300-302頁)。

 さて島崎は死体発見時に白河庭園にいません。ですから「中学生ぐらいの女の子」というセリフを聞いたのは“僕”だけです(21頁)。
 つまり島崎は,このセリフを実際には聞いていないのです。
 島崎が,白河庭園に「もうひとりいた」可能性について発言するのは,74頁でです。すると,21頁と74頁の間で,島崎は“僕”から,この最初の叫び声(「中学生ぐらいの女の子」)についての情報を得ていなければならないはずです。
 ところが,その間に,島崎がその情報を得たという描写がどうしても見つからないのです。
 見間違えた原因として「身長」や「衣服」あるいは「亜紀子とクドウさんがよく似ている」というようなことを話す場面(47-55頁)はあるのですが,「中学生ぐらいの女の子」という叫びが,島崎に伝わったという描写はないのです(読み落としているのかなぁ?)。

 では,いったい島崎はいつその情報を手に入れたのか?

 それがどうしても疑問点として残ってしまったのです。

 「ほら,ここにちゃんと描いてあるじゃないか」とか「これはこういうことなんだよ」と教えていただければ,幸いです(メールはこちら)。

98/02/15読了

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