本岡類『白い森の幽霊殺人』角川文庫 1991年

 霧ヶ原高原スキー場のペンション『銀の森』の常連客が,女の「幽霊」を目撃。翌日,その「幽霊」の死体が,ペンション裏の雪だるまの中から発見される。両足を切断された形で!つづいて幽霊を目撃した常連客が崖から転落死。事故死にかたむく警察に対して,疑問をもった『銀の森』のオーナー里中邦彦は,素人探偵にのりだす・・・。

 物語の途中で,探偵役の里中がいろいろな推理を披露しますが,残念ながらそれは,矛盾が目につくお粗末なものです(探偵本人はその矛盾に気づかないのでしょうか?)。だから「おいおい,このままいったらとんでもないことになるぞ」と,読者は(違った意味で)はらはらどきどきしてしまいます(笑)。そのため,探偵役が自分の推理の矛盾に気づいて,それを解決しようとするならいいのですが,「そうだ,これに違いない」と言った感じで推理を進め,ちょっとした偶然の出来事で,ころりと,自分の推理の根底からくつがえすような別の結論に乗り換えてしまうのは,ちょっといただけません。そんな推理にお手軽にのっかてしまう県警の刑事も刑事ですし・・・。神のごとき名探偵にも辟易しますが,こういった自分の推理の矛盾も気づかない探偵役というのも困ったものです。それと,どうも状況描写やらなにやら,「水増し描写」が目につくと思ったら,これはシリーズものだったんですね。

97/03/02読了

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