大槻ケンヂ(原案)・速瀬みさき(画)『蝶や蛾の施術師』リイド社 1997年
作画の速瀬みさきという人は初見なのですが,「原案」が大槻ケンヂということで読んでみました。「原案」というのは「原作」ということではなく,大槻ケンヂ(筋肉少女帯)の歌詞をもとに,作画者がイメージをふくらませて描いた,というような意味のようです。
絵柄的にはけっして馴染めないものではありませんが,ホラーにはあまり向いていないタッチのようで,それほど怖くはありませんでした。
8編をおさめる短編集ですが,気に入った作品についてコメントします。
「猫のおなかはバラでいっぱい」
おぼれた女性を救った(?)少年は,お礼に猫をもらう。その猫を食べようとおなかを裂くと,バラがいっぱいで…
幻想的で奇想に満ちた作品です。もらった猫を食べる,という発想に,ぎくり! とさせられます。オチが凡庸なのが残念です。
「僕の宗教へようこそ」
ふらりと村に現れた少年は,犬神憑きの姉をあっという間に直したことから…
犬神憑きなどが出てきて,ホラー風に展開しますが,ラストはブラックなミステリ,といったところです。犬神憑きを直すのに「アンテナ」を持ち出すところが,この原案者らしく,キッチュな感じがしますね。
「マタンゴ」
その「呪いの館」には,キノコに取り憑かれた少女が住んでいるという…
なつかしの怪奇映画『マタンゴ』を元ネタにした作品。「キノコに寄生される」というグロテスクなイメージと,寄生された少女のあどけなさのアンバランスさが,不思議な印象を与えます。
「何処にでも行ける切手」
浮浪者から,偶然譲り受けた1枚の切手。それ以来,彼は不思議な夢を見るようになり…
不気味でありながら,せつない作品です。旅への憧れを「切手」に託しているところが秀逸です。ラストがいまいちですが,本作品集では一番楽しめました。
98/04/13
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