坂田靖子『タイニーポムポム』小学館 2000年

 ファンタジィ・テイストの作品6編を収録しています(ところで表紙カヴァに「ファンファン・ファンタジー」というサブタイトル(?)がついてますが,どういう意味なんでしょう?)

「アラザン☆スターライツ」
 春なのに,ひどく冷え込む夜。学校からの帰り道,サルトルは不思議な光を目撃し…
 自分が苦手とするタイプの人物が,他の人から自分とはまったく異なる評価を得ているということは,ときとしてあるもので,その評価を知ることで,たとえ苦手であることは変わらなくても,その人に対する見方が変わる,ということがあります。今改めて考えれば,学校の先生について知っていることは,あくまで「学校」という限られた場での「先生」という立場での彼あるいは彼女であって,ひとりの人物−先生と生徒という関係を離れた−として知る機会はけっして多くないので,もしかしたら,まったく違う「顔」を持っていたのかもしれない,などと思うこともあります。サルトルたちにとって,口やかましいばかりであるハント先生を慕うアラザンと知り合うことで,サルトルの考え方も少し変わったのかもしれません。
「雪ダルマの危機」
 大雪が降った朝,セバスチャンは,滅亡の危機を訴える雪ダルマと出会う…
 地球温暖化は,世界的に討議されている問題で,ついこの間も,会議中に環境保護団体のおねーさんにパイを投げつけられた某国の代表がいましたが,まぁ,そんなことはともかく,「地球温暖化阻止を訴える雪ダルマ」という発想には,やはり思わず吹き出しています。また「情けない大人」と「しっかりした子ども」というカップリングは,この作者の定番ともいえる設定で,とくにマッチ売りの少女に対して,「だからってマッチすりに逃避すんなよ! そゆ性格だから凍死すんだろっ! 強盗でもしろっ!」と怒るところは,笑っちゃいますね。
「タイニーポムポム」
 おてんばなお姫様タイニーポムポムの新しい養育係は,なんと犬だった…
 ファンタジックで,スラプスティクで,ナンセンスなコメディです(なんか,ぜんぜんわからんぞ(笑))。こういった作品は,へんにストーリィを追ったり,意味づけしたりせず,ただただ出てくるユニークなキャラクタのドタバタぶりを楽しむのが一番でしょう。わたしとしては,門のすぐ横に穴が空いているのが,一番笑えました。でも,なんで「犬」なんだ?^^;;
「落ち葉のロンド」
 不況のせいで父ちゃんの工場は倒産寸前。ついに娘のマキコの貯金箱にまで手を伸ばし…
 本編も「なさけない大人」と「しっかり子ども」のお話。そこに「むしんくん」なる,いかにも怪しげなネーミングの化け物(?)を登場させて,ファンタジィにしています。「むしんくん」の腰の振り方が,なんだか,とってもプリチーです(笑)。ラストで,「むしんくん」の正体を匂わせるところがよいですね。
「ヘビヘビ再生工場」
 脱皮したヘビの皮を再生する妖精たち。ところが,最近はヘビもめっきり少なくなり,そのかわり…
 これまたナンセンス・ファンタジィです。ヘビの皮を再生する妖精という発想が楽しいですね。そこにPCゲームの「メデューサ」やら,「ヘッド・ハンティング」やらを絡めることで,ナンセンスの度合いを深めています。う〜む,よう,わからんぞ(笑)
「ファースト・クリスマス」
 せっかくのクリスマスなのに,両親は夫婦ゲンカ。“僕”は雪の街に出るが…
 ワムのヒット曲に「ラスト・クリスマス」というのがありましたね(笑)。それはともかく,本集中,唯一ファンタジィ色のない作品ではありますが,欧米でクリスマスの際に,必ずといっていいほど書かれるという「クリスマス・ストーリィ」のような,ハートウォームな1編です。たとえ中身が人間で,たとえ客寄せのアルバイトだったとしても,サンタクロースは子どもの味方,いつでも子どもたちに「奇蹟」を与えてくれるのでしょう。本集中で,一番好きな作品です。

00/11/28

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