大橋薫ほか『新/都市伝説』スタジオDNA 2001年

 「都市伝説」と銘打ってありますが,いわゆる「実話怪談」ではなく,9人の作家による(おそらく書き下ろしの)ホラー・アンソロジィです。田島昭宇によるカヴァ・イラストがいいです。

大橋薫「UNBORN」
 臨月間近の婦人の話し相手としてバイトをはじめた彼女は…
 「割のいい奇妙なアルバイト」というのは,都市伝説においてもっともポピュラーな素材のひとつなのでしょう。それに「妊娠」というネタを結びつけたところはユニークですね。
COMA「HOLE」
 その崖下にある「穴」には奇怪な言い伝えがあり…
 この手のモチーフだと,わたしの世代では「防空壕」絡みの伝説なのですが,その辺は時代の変化なのかもしれません(今時の人は「防空壕」なんて知らんぞ!(笑))。陰影の濃いタッチが画面に迫力を与えています。
桐嶋たける「影よゆけ」
 その少女には,死んだ双子の弟がいたという…
 オーソドクスな「双子ネタ」の作品です。シャープな絵柄はけっこう好みなんですが,ストーリィ的にちょっと陳腐な感が免れません。
雨城みずか・神大寺要「BASEMENT〜地下で蠢く者〜」
 曰く付きの屋敷に招かれたふたりの女性探偵が見たものとは…
 典型的なゾンビネタのB級ホラー映画といったテイストの作品。そういった映画に対するオマージュなのでしょう,としておきます(笑) それにしても主人公たちが呼ばれる必然性がない!^^;;
楠桂「TOO LATE」
 三辻で死んだ人の名前を3回呼ぶと,死者に逢えるという…
 やっぱり絵柄が似てますね。同じ作家さんかと思っちゃいました(笑) 愛する人に再会したいという少女の心の揺れ動きを,巧みなコマ割りで描いています。しかしタイトルを読み返してみると,ぞくりとする怖さが・・・
美川べるの「学園天国一歩手前学園」
 その学園が廃校になる理由,それは…
 廃校の理由が,「学校妖怪」の跳梁というところもおもしろいですが,それ以上に,主人公と妖怪たちとのテンポのよい会話−ボケとツッコミ−が笑えます。とくにビジュアル系妖怪(笑)「生きてる人体模型」くんのキャラは秀逸。
天六剣「らくがき」
 腹立ちまぎれに,公衆トイレにらくがきしたことから…
 ネタ的にも,ストーリィの展開も,ラストの処理も,いかにも「都市伝説」にありそうな感じで好きなのですが,いかんせん絵柄がいまいち趣味に合いません。う〜む,残念。
秋恭摩「TWO SCYTHE」
 強盗殺人を犯した男を追いつめる者とは…
 この作家さんの名前は,書店でよく眼にするのですが,(たぶん)初見です(伝奇アクションを得意とされるんですよね?) シリーズもののワン・エピソードという感じの作品です。主人公の造形は,どこかアメコミを彷彿させます。
浅茅峰子「最後の晩餐」
 大学時代の友人が経営するレストランに,離婚目前の夫婦が訪れ…
 ををっと! 初期の大友克洋を思い出させるタッチとコマ割り。ラスト近く,「大学時代につきあっていた女」云々の説明的セリフが瑕瑾といえば瑕瑾ですが,よく見かけるネタを,淡々としたタッチで描くことで上手に料理,佳品に仕上げています。本集中,一番楽しめました。

01/09/01

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