永久保貴一『新 カルラ舞う!』7巻 秋田書店 2001年

 前・中・後編よりなる中編1編と,短編1編,「おまけ」2編を収録しています。

「伊豆の事代主」
 怪死事件が立て続けに起こるテレビヤマトから,解決を依頼された扇姉妹。事件の背後には強力な呪詛が隠されていた。一方,三宅島の噴火を沈めるため神事を執り行う三島大社で怪事が出来。ふたつの事件をつなぐものは?
 伊豆というと,たしかに地震が多いですが,温泉とか休養地というイメージが強くて,さほど伝奇的な雰囲気を感じていませんでした。しかし半島の南半分が賀茂郡であるとか,かつて役行者が流されたとか,いろいろとあるんですね(たしか源頼朝も流されたの伊豆でしたよね)。そこに,報道被害や三宅島の噴火といったお得意の時事ネタ(といったら不謹慎かな)を絡めるあたりは,この作者らしいところですね。
 ストーリィ的には,安定しているというか,ちとマンネリな感じも否定できません。とくに前回に続いて,また「神様」相手に扇姉妹が奮闘するというのは,少々「芸がない」ところでしょう。やはり神の力を利用しながら,みずからの野望を遂げようとするような毒々しいキャラクタに登場してもらいたいところです(「奈良怨霊絵巻」「飛騨怨霊絵巻」両面僧正みたいな・・・)。
 でも,三宅神社の神主三武のおじさん,顔は森元総理みたいな,コテコテの「ヲヤジ」ながら,なかなかかっこよいですね(「くそっ わしがやってやる。わしが火達祭から御幣流しまでやってやる!! 今すぐ! やってやる」のセリフとか・・・)。もしかして,取材でよくしてもらったのかな?(笑)

「脚折(すねおり)竜神祭り」
 神事に用いる「竜水」が盗まれた。近江と舞子は,それを取り戻すべく雨乞い祭りに行われる埼玉県鶴ヶ島市白髭神社に向かうが・・・
 本編の「目玉」は,やはり,カルト教団退治の後遺症(?)で「色気づいてしまった舞子」でしょう(笑)。扇おばあちゃんの「どうしたんじゃ,舞子はむつかしい本でも読んだのか?」のセリフには笑っちゃいました。で,近江君とコンビを組んで,鶴ヶ島市に向かうわけですが,近江君と舞子,以前から「ほにゃららら」な関係が匂わされていたので,キスのひとつも,という展開になりそうなんですが,色気づいた舞子を見るときの近江君の茫然とした顔つき(目の下に斜線入り(笑))から想像する限り,とてもそんな雰囲気じゃありませんね。 それにしても,「色気」を表現するのに「うふ〜ん,あは〜ん」というのは,レトロ過ぎませんか?(笑)
 ところで,わたし,埼玉県出身なのですが,本エピソードの主要舞台「鶴ヶ島市」って知りませんでした^^; ネットで調べたら川越市のすぐ北。関越自動車道が開通してから東京が近くなり,「市」になったのは10年前とのこと。・・・う〜む,知らないはずだ。埼玉離れてもう20年近くなるし・・・(^^ゞ

「酒呪雑多」
 毎回恒例の「あとがきマンガ」です。これ,けっこう好きなのですが,今回は1ページと短くて残念。ただ個人的には,「呪」よりも「酒」の方が楽しみなんです(笑)

「マンガ紀行 咒呪の国勝手行」
 これだけ掲載誌が『歴史と旅』(ひえぇ,まだあったんだぁ・・・(^^ゞ)の文章主体の作品です。『検証 四谷怪談 皿屋敷』(朝日ソノラマ)中に収録されている「亡霊お菊の伝承」の「文章ヴァージョン」というか,「焼き直し」というか・・・^^;;

01/05/23

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