永久保貴一『新カルラ舞う!』2巻 秋田書店 1999年

 事件の中心地・諏訪に集結したカルラ軍団,彼らに襲いかかる復古神道・巳差口神。「神風」の使い手・湛によって舞子と永鉄斎がさらわれた! 背後で糸を引く巳差口御前の真の目的はなんなのか? 囚われの舞子の運命は? そして「時を超える能力」を持つ匠は?

 というわけで,新生カルラの第2巻,「諏訪恐霊祭」完結編です。
 前巻の感想文で,「時を超える能力」というのは,巧く使わないとご都合主義に陥る危険性がある,というようなことを書きました。この能力によって,主人公やメイン・キャラクタが絶体絶命の危機からすんなりと脱出できてしまう場合などがあるからです。そうなると「なんでもあり」になってしまいます。この作品でも,途中「ありゃりゃ」と思うところもあり,その使い方にちょっと首を傾げるところもありましたが,それでも,ラストになって巳差口神道の真意が明らかになったところで,「をを! こういう手で来たか!」という感じで,感心しました。このエピソードのストーリィ展開にうまいことはめ込まれていましたね。

 またそれと関連して,今回の事件の黒幕・巳差口神道の真意も,最初は「軍国主義の亡霊」かなぁ,などと思っていたのですが,これまた,そういったワンパターンにならず,なかなか巧い展開でしたね。この作者のオカルトものは,(作者の本意はどうであれ)社会的なネタがけっこう多く取り入れられているところに特色がありますが,今回もそこらへんが色濃く出ています。ただもう少しつっこんでほしいな,と思うところもありましたが,少女マンガという商品の性格あるいはエンタテインメントとしての本作品の性格を考えると,難しいのかもしれませんね。

 それと諏訪神社に伝わる,いわば「人身御供」「神風」のマッチングは秀逸です。諏訪に伝わる奇祭「諏訪の御柱祭」の理由を,ああいう風に解釈してしまうのは(こじつけてしまうのは^^;;),なんとも凄いですね。凄すぎて思わず信じてしまいそうです^^;; 

 さて次回は出雲あたりでしょうか?(スサノオネタは,むちゃくちゃ大変そうですが・・・),それとも北九州?(磐井の反乱とか,金印ネタ・・・)。鹿児島の熊襲隼人あたりもおもしろいんですがね(笑)

98/04/12

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