小山田いく『臨死界より』 秋田書店 1997年
「魂七夕」「送り火ゆれて」「臨死界より」「渡り鳥たち」「雪降る夜に」の5編よりなる,ホラー短編集です。
小山田いくというと,『すくらっぷ・ぶっく』や『星のローカス』といった,「ほのぼの青春系」といったイメージが強いので,こういったホラーも書いていたんだな,と,ちょっと驚いています。まあ,兄・たがみよしひさと同様,妖怪や民話伝説も好きなようなので,その流れからすれば,自然なのかもしれませんが・・・。「魂七夕」とか「送り火ゆれて」とか,そういった雰囲気を持ってますし。
ホラーということで,ぐちゃぐちゃどろどろの死体やら,おどろおどろの化け物やらが出てくるのですが,そのほかの「ほのぼの青春系」の絵柄の登場人物と,どうもしっくりきません。Hマンガで,×××シーンが「お約束」というか,編集側から課せられた「ノルマ」であるのと同じように,ホラーコミック誌でも似たような「お約束」「ノルマ」があるのでしょうか? スプラッタだけがホラーではないと思うんですが・・・
でもストーリー的にはけっこうおもしろいのもあります。たとえば「雪降る夜に」では,恋人を取られた腹いせに,親友を刺し殺してしまった少女が,もうひとりの親友に頼んで,死体を始末しようとします。ところが,その夜,死体が隣に寝ている! そして死んだはずの親友が起きあがるのを見て,彼女は,じつは刺されたのは自分だったのではないかと疑い・・・「落ち」は多少甘めですが,そこにいたるまでのプロセスは,なかなか不可思議で奇妙な雰囲気を感じさせます。
97/04/09