学校で一番美しい安奈。しかし,長いこと病欠していた少女・きみかが復学してから,彼女の美しさが評判となり…
わたしは,嫉妬という感情を一概に否定するものではありません。ときに嫉妬は,みずからを向上させようとするパワーの源にもなりえるからです。しかし同時に,嫉妬という感情は,その対象を貶めたり,排除したりすることで満たされてしまうことが往々にしてあります。本編は,『白雪姫』に代表されるように,他の美女に対する嫉妬が,女性を「鬼」に変えるという,古来から繰り返し語られてきたモチーフをメインにしていますが,このエピソードのおもしろさは,そんなプラスにも向かい得る「嫉妬」という感情を,ひたすらマイナスの方向へ―破滅の方向へと導く,もうひとりの「鬼」を設定している点でしょう。鬼女鬼魅香は言います。
「わたしはただ殺されただけのあわれな女よ。嫉妬からぐちゃぐちゃに殺されたのよ。わたしは何もしてないわ」
そう,真なる「鬼」は,みずから手を下すことなく,人の嫉妬や欲望や憎悪といったダークな部分を増幅させ,流れ出す道筋を作り,人を破滅に追いやる存在なのかもしれません。
さて,カヴァ裏の「作者の言葉」によれば,「『鬼切丸』もいよいよクライマックスへ」とのこと。この鬼魅香との対決が,この作者の一番長いシリーズ作品の終幕となるのでしょうか? これまでに出てきたさまざまなキャラクタ―鬼姫鈴鹿御前や,「鬼喰い」の幻雄,ジャーナリストの後藤沙英―なども絡んできてくれるとうれしいですね(個人的には,とくに後藤沙英おねーさまの復活を望みます(笑))。