とり・みき『御題頂戴』ぶんか社 1999年

 どうしてもマンガのネタが思いつかない作者が,「マンガ家20周年記念 今回だけは許して他力本願」というわけで,いろいろな人からもらった「御題」をネタにして描いたという作品です。

 う〜ん・・・どういう成り行きでできあがった作品なのかわかりませんが,上に書いたような設定が「ホントかな?」と思ってしまうわたしはひねくれ者でしょうか?(笑) この作者のエッセイ・コミックなどを読むと,テレビ番組の企画に対する鋭い「ツッコミ」が見受けられます。そしてそれをギャグに転換する才能も持ち合わせている作家さんだけに,一種の「企画もの」的な体裁を作っておいて,じつはそれをパロディ化している可能性もあるんじゃないかな,というような気がしてならないのです。
 いや,だからどうだ,というわけじゃなく,もしそうだとしても,この作者らしい「持ち味」ですし,ホントに「御題」をもらって描いているとしても,それはそれで,やはりすごい才能だと思います。

 とまぁ,そんなわけで(どんなわけで?)作者は,いろいろな人―ときに作者の友人の作家さんやマンガ家さんの名前が見られます―からもらった「御題」で,お得意のキッチュでナンセンス,そしてパロディにあふれたショート・ストリィを並べています(パロディの元ネタもあいかわらずマニアックなものが多いですし^^;;)。
 こういった相互に関連しないネタでショート・ストーリィを羅列していきながら,その一方で,同じキャラクタを使い回したり,ふたつのネタを結びつけたりして,けして明確に区切られたわけではないけれど,ぼんやりとしたひとつの「閉じられた世界」を構築していく手法は,以前『a Heebie-Jeebie』で試みられたもので,作者がもっとも十八番とするものと言えましょう。

 そんな作品ですから,1編1編の感想を書くことはできませんが,個人的に好きな話は,「女優」「自転車」「埋蔵金」「グランプリ」といったところでしょうか。とくに「グランプリ」で描かれる「シャーペン飛ばし」(というのかな?)は,「そうそう,やった,やった」といった感じで,思わずノスタルジィにひたってしまいました(笑)。

99/08/31

go back to "Comic's Room"