黒川あづさ『なんとかしろ!』 ズコラ 1996年

 今では多少セレクトしてますが,1年ほど前までは,4コママンガ誌をあさるように買って読んでました。4コママンガのいい点は,実際に描いている作家さんたちには申し訳ないのですが,とにかくチャカチャカ読んで,次回を読まなきゃいけない,という妙な義務感(?)を植え付けられないですむところにあります。だから1回くらい買い損ねてもあまり気になりません^^;;
 さてこの作品は,そんな4コマ誌『まんがタイムファミリー』に連載されていた,マンガ家の生活と本音を赤裸々に(笑)描いたエッセイコミックです。気に入っていた作品だったのですが,1回8ページ,1年ちょっと(15回)で終わってしまったので,「単行本にはならんだろうなあ」と半ばあきらめていたのですが,3本ほど別作品を追加して,うれしいことに昨年末に単行本化されていました(^o^)。で,今回ようやく購入し,読むことができました。

 タイトルからもわかりますように,主人公である作者の作中での態度は,かなり投げやりです(笑)。
 なにしろ連載第1回から,締め切り直前にグアムへ行き,真っ白な原稿用紙を前にして,「ネタがない,だから遊びに行こう」といいつつ,カラオケに行ってしまいます。4色カラー原稿を描くのが嫌いなものですから,「カラー原稿撲滅キャンペーン」を実施しようという,マンガ家らしからぬ(というか,もしかするとマンガ家らしい)ことを言い出したりします。あるいは20時間後の締め切りまで20ページを書き上げねばならない状態で,アシスタントに「どっか一緒に逃げよう」と誘いかける,といった具合です。
 でもって,このアシスタントのN島(仮名)というのが,またおいしいキャラクターで,ボケる主人公にしっかりつっこみます。主人公がひとつボケると,10個くらいつっこみます。ある意味で正調「ボケとツッコミ」コンビの漫才を見ているようです。そうそう,このコミックのギャグの書き方は,かなりオーソドックスのように思います。つまり左ページの最終コマでギャグの「ひき」を描いて,次のページの1コマ目でしっかり落とす,というパターンが多いようです。だからとても読みやすいです。
 また主人公の態度が投げやりなわりには,絵はそれほど乱れていないところが,この作者のまじめさであり,偉さでもあり,また小心さでしょう(笑)。

 ところで黒川あづさって,レディス・コミックのマンガ家なのでしょうか? わたし,この作品しか知らないのですが・・・

97/05/12

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