垣野内成美『吸血姫 美夕』1巻 秋田書店 1989年

 吸血姫一族の長・美夕――彼女は,闇の空間で深く眠る神魔たちの監視者。しかしときとして人間界に紛れ込む“はぐれ神魔”を狩り,闇にもどすハンターでもある。今日もまた,従者“ラヴァ”をともない,人間の乱れた心が招き寄せる神魔たちを追い求める・・・。

 アニメ化されたりして人気のある作品のようです。前々から探していたのですが,なぜか1巻だけ書店に置いてなくて,読む機会がありませんでした。で,ようやく入手,とりあえず1巻を読んでみたのですが・・・。

 う〜む,正直なところ,残念ながらあまり楽しめませんでしたねぇ・・・。
 絵柄的には,けっして嫌いなタッチではないんですが,どうもキャラクタの区別がつかないのです。とくに主人公・美夕以外の少女たちがいずれも同じ顔に見えてしまって・・・。美夕さえも,独特の髪型のときは,美夕とわかるのですが,髪を下ろしたシーンでは,「あれ,これ誰?」と戸惑ってしまいます。そういった戸惑いというのは,ストーリィを追う際にどうしても障害となってしまって,読むリズムとでもいうようなものが狂ってしまいます。そこらへんが楽しめなかったことのひとつの理由でしょう。

 それともうひとつの理由は,設定そのものがよくわからなかったことです。もちろん,こちらのほうは,1巻しか読んでいないので,これからの展開でおいおい明らかにされていることなのかもしれませんが,少なくとも現段階では,ちとわかりづらい印象が強いです。
 たしかに文章で,「吸血姫一族は神魔を監視する役目,美夕はその長」というようなことは書いてあります。しかし神魔と吸血姫一族との関係,神魔と人間との関係,そして吸血姫と人間との関係など,三者の関係が十分に描かれていない感じです。またなぜ神魔は闇の中で眠っているのか? 神魔はなぜ人間にちょっかいを出すのか? 吸血姫はなぜ「はぐれ神魔」を監視するのか? そこらへんもはっきりしない・・・。神魔自身,「神」なんて文字を含む,ものすごいネーミングのわりには,美夕とラヴァにいともあっさりやられてしまう。「神魔」っていったいなんなのでしょうか?  もし,いま書いたような「謎」が「謎」として提示されているならば,それはそれで,物語を押し進める大きな「力」になるのでしょうが・・・・。
 「キャラクタと設定」という骨組みだけができていて,それに「物語」という肉付けが十分にされていない――比喩的に言うと,そんな印象が拭えませんでした。

 個人的には,どうもあんまり相性がよくないようです(美夕ファン,暴言ご容赦!)。

98/07/22

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