佐藤ゆうこ『メイドのお仕事』1巻 双葉社 2003年

 夏目家につとめるメイドサエさんを主人公とした4コマまんが。基本的にドタバタ・コメディです。
 表紙折り込みには「健気でカワイイ癒し系メイド」と紹介されていて,たしかに「メイドは天職」というくらい家事全般有能のようですが,それだけではくくれない「毒」のある一面も持っているようです。
 たとえば,メイドになったきっかけというのが,母・兄・サエさんの3人暮らしのところで,兄が奥さんを連れて同居,その際,母親に「あんたみたいな小姑がいると,嫁がノイローゼになる!」と追い出されたそうです(笑) また村の盆踊りでは,やぐらの上で「ドジョウすくい」を踊るという,なかなかの変わり者。どうも一筋縄ではいかないキャラのようです。

 で,その「毒」が出るのが,勤め先夏目家の人たちに対するときでしょう。
 夏目家は,お父さんと息子2人。お父さんは小説家で,幼なじみの画家と,子どもの頃,「大人になったら和服を着てヒゲをはやそう」と約束したという変わったところもありますが,比較的まっとうです。もっとも,サエさんに原稿用紙を買いにやらせ,「ゆっくりでいいよ」とか言いながら,編集者に「原稿用紙を買いに行ったメイドが戻ってこない」と言い訳するしたたかさも持っています(もっとも,サエさんも,長男カズオのケイタイに電話して,それを確認するという,よりうわてのしたたかさを持っています(笑))
 その長男カズオは,一応デザイン会社に勤めているようですが,典型的なスチャラカ社員(笑) おまけに二枚目の女たらし。なにしろ本命の女の子の名前さえも思い出せないほどのプレイボーイです(「それって本命か!?」と,作者からつっこまれてます(笑))。
 そしてなんといっても,メイン(?)となるのが次男の二郎,二浪して大学に入り,二留,卒業後はプー太郎,将来の夢は路上詩人とかほざいているダメダメ男です(おまけに路上詩人に「元手いらずにギャルにモテモテ」などと都合のいいイメージを持っています(笑))。
 さすがのサエさんも,二郎に対してはけっこう手厳しい。梅雨の頃,外に洗濯物を干せないので,二郎の部屋に干したり(ベッドの上に濡れたパンツ(笑)),肩もみを頼まれて,お父さん,カズオはしてあげても,二郎には「死んでもイヤです」とばっさり,二郎の脱いだ服は,透明ゴミ袋に入れて回収ということもやったりします。このあたり,とてもメイドとは思えないリアクションが,じつに楽しいです(でも二郎のキャラを見ると,サエさんの気持ちもわかったりします(笑))。

 しかしじつを言うと,1巻にはまだ登場していませんが,掲載誌の『まんがタウン』では現在,もうひとり,彼らよりずっと濃いキャラが登場しています。二郎のGFキリコさん。二郎のGFという点ですでに,常人ではありませんが(笑),とにかくもう,言うことなすことエキセントリックで,サエさんだけじゃなくて,夏目家全員が振り回されます。
 2巻になったら,二郎とキリコさんとの「なれそめ」などが描かれるかと思うと,もう楽しみで楽しみで(笑)

 冒頭にも書きましたように,絵柄からすると,たしかに「健気でカワイイ癒し系メイド」のお話なのでしょうし,今流行の「メイドもの」という点で,メジャー的な流れなのでしょうが,なかなかのブラックさを含ませた本編,大笑いさせられる一般的なおもしろさというより,「ぐふぐふ」と含み笑いを誘うような,むしろマイナー的なおもしろさがまさっている作品と言えましょう(<作者に対しては,失礼な言いぐさですが(^^ゞ)。

05/10/30

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