竹宮恵子『告白』『オルフェの遺言』『殺意の底』中公文庫 1997年

 「竹宮恵子SF短編集」と題された文庫シリーズの1〜3巻です。

 多感な頃(笑),萩尾望都にはかなりはまりこみましたが,実を言うと,竹宮恵子は,「なんか絵がごちゃごちゃしている」という印象が強く,ちょっと苦手でした。そのためかどうか知りませんが,自分が読んだことのある竹宮作品は『地球へ・・・』と短編の『集まる日,』だけだと思いこんでいました。話題になった『風と木の詩』がどういう世界を描いているか,程度の知識はありましたが。ところが,今回このシリーズを読んでみると,『ジルベスターの星から』とか,『告白』とか,『決闘2108年』とか,「あ,読んだことある」という作品に,いくつか出くわしました。げに恐ろしきは思い込み,といったところでしょうか。

 この作品集で一番驚いたのが,『集まる日,』の続編が,3作品もあったことです。初出誌が出ていないのでわかりませんが,『集まる日,』はもう20年近く前の作品だったと思いますが,その完結編だと思われる『そして,集まる日。』は,絵のタッチの変わり具合から,ごく最近の作品ではないでしょうか? 作者の『集まる日,』(とくに主人公の終笛(オルフェ))に対する思い入れを感じました。

 それから『殺意の底』に入っている『エデン2185』シリーズは,おもしろかったのですが,ちょっともったいないな,という気がします。もっといろいろ書き込んでいけば,星野之宣の『2001夜物語』みたいな,重厚な作品になったかもしれません。まあ,作者の方でもいろいろ都合があるのでしょうけれど・・・

97/03/01

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