ゆうきまさみ『じゃじゃ馬グルーミン★UP!』18巻 小学館 1999年

 駿平ひびきが,休日をあわせてデートをしていることに気づいたたづなは,ひびきにそのことを問いつめます。偶然,その場を盗み聞きすることになってしまった駿平は,ハラハラドキドキ。そしてひびきは,ぽつりと呟くように言います。

 「そうね・・・あたしは駿平のことが好きなのかもしんない」

 う〜む・・・いいですねぇ・・・このセリフ。「かもしんない」というところが,ひびきのキャラクタ,そして恋を自覚しはじめた少女の気持ちを,じつに巧く表現していますね。このあと,ひびきが駿平に面と向かって「好き」と告白するシーンがあるのですが(1ページの大ゴマを使ったクライマックスではあるのですが),どちらかというと,こちらの告白(?)の方が,なにやらしみじみとするものが感じられますね(<おぢさんだからだろうか?(^^ゞ)
 ところで,この告白の前後に,駿平の両親が突然渡会ファームにやってきて,彼らにひびきが駿平の働きぶりを熱心に話したりするエピソードや,ひびきとのツーリングができそうにない駿平の「東京に帰るかな」という呟きをひびきが誤解するエピソードが描かれます。こういった,なんらかの「事件」や「誤解」をきっかけとして,キャラクタ同士の恋が一歩進むというパターンは,ラヴ・コメの常套といえば常套なのですが,この作者にかかると,そこらへんの展開が不自然でなく,じつにスムーズに感じられますね。エピソード作りの巧さなのでしょう。

 さて,ついにひびき=駿平=たづなのトライアングルが決着,ということになったわけですが,やっぱ,かわいそうなのは,たづなちゃんであります。一途で,まじめな性格の彼女だけに,「だれがあんたみたいな優柔不断な男のこと,好きになると思っているのさ!!」と捨てぜりふ(?)をいいながらの涙シーンは,なんとも胸をうつものがありますね。
 で,もうひとつのトライアングル,駿平=ひびき=悟も決着とあいなったわけですが,たづなちゃんの方に比べると,なぜか悟の方はあんまり可哀想じゃない(笑)。あぶみの無邪気な一言に,エクスカリバーの剣みたいのがズボズボと胸に刺さるわ,「つまりあれかな,ぼくの努力が足りなかったということかな」というセリフに,たづなちゃんから「余裕かましてんじゃないわよ!」と思いっきり突っ込まれるわ,と良いとこなしですが,どうしてもコメディになってしまうでしょうね,八方美人の彼の場合は・・・^^;;
 でもその悟くん,札幌で酔ったはずみであぶみさんと一夜を共にしてしまうという(<けして嘘ではない(笑)),新たなラヴ・ロマンスの気配が出てきています。なんとなく上手くいっていそうだった猪口んとこのボンとの縁談話に,なにやら翳りが見えてきただけに,今後の展開が気になるところです(たしかになぁ,あんな小姑がおったら,たまらんやろうなぁ・・・)
 それにしても表紙のあぶみさんは,じつにいろっぽいですなぁ・・・(<ますますおぢさん^^;;)

 さてさて,ひびきとの恋も順調,無理して産ませてもらった(と思っている)ヒコにも買い手がついた,ということで,順風満帆の駿平,ようやく彼にも春が来たようですね。
 そうそう,このヒコを調教師の芹沢先生がチェックしているところを,駿平とひびきが手を握って見守るシーンも,心がほんわかしますね。ひびきの「こほん」も笑いを誘います。

98/04/01

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