高橋留美子『犬夜叉』3巻 小学館 1997年

 “四魂の玉”のかけらを探し求める犬夜叉とかごめ。今回は,戦国時代と現代を股にかけて犬夜叉が大暴れです,というような惹句がありそうな・・・。さてこの巻の最初のお相手は,蛙の殿様(王子さまではありません(笑))。女性たちが囚われた蛙の卵は,なんともえぐくて,不気味なのですが,蛙そのものは,間抜けそうで,ちょっとラブリー。で,その蛙に囚われた露姫様(ツル姫ではない)を救いに行くのが,信長くん。といっても,あの織田さんのところの信長くんではなく,武田さんちの家臣らしい。「あのような尾張のうつけと一緒にされては困る」といいつつ,なかなかのうつけぶりが,いい味だしてます。こういったキャラを描かせると,やっぱり高橋留美子らしさが出ますね。久しぶりに「我が人生に悔いなし」というセリフが出てきました。なんだか,この信長くん,また出てきそうな気がします。

 かごめも実は中学3年生。来年は高校受験で忙しい。テストのために現代に戻ります。ところが,現代にも“四魂の玉”のかけらを持つ妖怪が・・・。そしてかけらを狙ってかごめを襲う! う〜む,この「肉づきの面」はこわいですねぇ。ろくろ首みたいに「首が伸びる」というのは,こういった妖怪物ではときどき見かけますが,「顔が伸びる」というのは,画像にすると,これほど不気味とは思いませんでした。でもって現代にもしっかりいるんですね,うつけものが(笑)。かごめに好意を寄せているらしい北条くん。女の子のプレゼントに健康サンダルとか青竹って,単なるあぶね〜やつじゃねえのか? あ,それとこれも常連キャラ(?)馬夫さんと鹿子さん。今回はけっこうセリフが多くてよかったですね(笑)。

 以上2シリーズは「不気味系妖怪」であったのに対して,この巻最後のエピソードで出てくる「飛天満天」は「格闘系妖怪」。格闘シーンが多くなりそうです(どちらかというとわたしは「不気味系」の方が好きです)。でもって,またまた出てきました子狐妖怪。『うる星やつら』の子狐も好きですが,こちらもなかなか元気がよくていいですね。どちらかという「テンちゃん系」かな? それにしてもカラーページで,その子狐が化けた,いたずら書きのような妖怪を出してしまうというのも,すごいと言えばすごいです(笑)。

 けっこう楽しめたのですが,ちょっと不安も。こういった「探索もの」は,どうしても話の展開が単調になってしまうきらいがないでもありません。なぜ犬夜叉が“四魂の玉”にこだわるのか? という謎をどう巧く生かすか? そこらへんが鍵になるのではないでしょうか?

97/10/24

go back to "Comic's Room"