高橋留美子『犬夜叉』27巻 小学館 2002年

 謎の白霊山をめぐって,七人隊と死闘を繰り広げる犬夜叉一行。さらに鋼牙,殺生丸,桔梗が加わり,戦いは複雑な様相を呈し始める。そして,ついに白霊山の中に入り込んだ弥勒と珊瑚を待っていたものは,神楽と化け物たちの襲撃だった。絶体絶命の彼らの元へと犬夜叉は走るが…

 さて本巻は3部構成よりなっています。といっても,作者が分けているわけではなく,わたしが勝手にそう思っているだけですが(笑)
 で,その「第1部」の主人公は,やはりなんといっても殺生丸であります。とにかく,かっこいい! 蛇骨の変幻自在な蛇骨刀の攻撃を,背を向けながらもあっさりと跳ね返してしまうところとか,睡骨によって,りんを人質に取られ,さらに白霊山の結界の中で,力を十分に発揮できない状況での臨機応変な戦いなど,そのクールな顔付きでやってのけてしまう姿は,りんじゃありませんが,思わず「殺生丸さまぁ〜(はあと)」と叫びたくなるような(笑)凛々しさでございます。
 でもそのクールさが一番よく出ているのが,りんを奪われた邪見に向かって,「死んだふりか?」と,さらりと問うところでしょうね(笑)

 「第2部」は,犬夜叉鋼牙の凸凹コンビと,「歩く火薬庫」みたいな練骨とのバトルです。策士っぽい,ねちっこい攻撃を仕掛ける練骨に対して,どちらも直情径行タイプの犬夜叉と鋼牙。その噛み合わせの妙が楽しめるエピソード。お互いに罵り合いながら,いざ戦いの場面になると,絶妙なコンビネーションを見せるシーン−「痩せ狼! そのバカ,こっちに蹴り出せ!」−がいいですね。
 でもって,かごめをめぐる三角関係。いつもは照れて,かごめへの想いを表わさない犬夜叉ですが,こと鋼牙を前にすると,そうはいかないようです。鋼牙への対抗心もあって,ストレートに,というか必要以上に,かごめへの想いを口にします。でも「けっ,くやしいか。ざまーみやがれ,ば−か。」って,ほとんど子どもですね(笑) 鋼牙の(いまだ名前のない^^;;)子分が言うように「ま,ふたりともバカってことで…」というところが,とりあえずの「結論」なのでしょう^^;;

 そして「第3部」は,白霊山の中の洞窟へと潜入した弥勒珊瑚のコンビをめぐるエピソードです。結界の中央には,神楽が潜んでおり,白霊山が奈落の策謀と結びついていたことが(予想はついていたとはいえ)明らかにされます。そしてふたりに襲いかかる化け物たち。苦戦を強いられる弥勒と珊瑚ですが,その最中,それぞれに互いに対する想いが迸ります。弥勒曰く「愛しいおなごと引きかえに長らえた命など…この私はもちあわせておらん!」。一方,珊瑚もまた,瀕死の弥勒の「ひとりで逃げろ」の言葉に「置いていくくらいなら…ここで一緒に死ぬ!」
 危機の中にあって確かめ合う愛,ということで,本来ならばとても感動的な場面なのですが,弥勒が上の言葉を発したときには,珊瑚は気を失ってますし,珊瑚は珊瑚で,自分が口にした言葉を覚えていない様子。このあたり,『うる星やつら』『らんま1/2』でも見せた,この作者らしい「引っ張り方」でありまして(笑),やはりオーソドクスな「ラヴ・ロマンス」とはいかないようです^^;;

 さて聖域に入り,人間に戻ってしまった犬夜叉,彼に襲いかかる蛇骨。また聖域の中心で,弥勒と珊瑚が見つけた白心上人の即身仏。いよいよ「白霊山編」は佳境に入っていきます。

02/09/27

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