高橋留美子『犬夜叉』26巻 小学館 2002年

 犬夜叉一行の行く手に立ちふさがる七人隊の頭目・蛮骨。彼の振り回す大鉾の前に,犬夜叉の“風の傷”も無力。一方,琥珀を追って,白霊山にたどり着いた殺生丸は,あらゆる邪悪さを浄化してしまうはずの白霊山の中に,奈落がいることを知る。白霊山に隠された秘密とは? そしてその結界を張った僧侶・白心上人と奈落との関係は?

 さて前巻では,アクション・シーンに終始して,いまひとつ展開がフラットでしたが,この巻に入って,ふたたびストーリィが動き出した観があります。
 ひとつは,七人隊の頭目蛮骨の登場。これでようやく七人隊が全員そろって,犬夜叉一行,鋼牙殺生丸たちとの全面的な激突がいよいよ近づいてきたという感じです。とくに蛮骨の武器,大鉾“蛮竜”。男手数人でさえ手に余る巨大な鉾を軽々と振り回す,といった設定は,犬夜叉の“鉄砕牙”に対抗することを眼目にしたものといえましょう。“蛮竜”を持っていたお城の殿様の首をあっさりとちょん切ってしまう残忍さもいいですね。でもまぁ,多少は「強い敵のインフレーション」という気がしないでもありませんが…^^;;

 そしてもうひとつは,前巻でも少しだけ触れられた“白霊山”です。あらゆる邪悪なものを寄せ付けない聖山。本巻では,それと同じように強力な結界で守られた“聖島”が登場。そのふたつの「聖地」を作ったのが,白心上人という僧侶であることが明らかにされます。
 全身これ邪悪の固まりと言っていい奈落(かつて,奈落の新しい身体が,妖怪同士の闘争による蠱毒によって形作られたというエピソードがありましたよね)と,たとえ人間でも邪な心を持つもの(例:弥勒(笑))は気分が悪くなるほどの“聖地”…このふたつの拒絶しあい,矛盾する両者が,どのような「からくり」で結びついているのか? ましてや白心上人が残した独鈷は,なにゆえ,奈落の手先(?)となっている蛮骨を守るのか? このあたりがじつにミステリアスで,ストーリィをぐいぐいと引っ張っていきます。やはり,ストレートなバトル・シーンもいいですが,こういった「謎」を求心力としながら展開するストーリィの方が,個人的にはおもしろいですよね。
 作中,殺生丸が,「読めてきたぞ,からくりが…」と考えるシーンがありますが,どういった「からくり」なのか,今のところ,わたしには見当がつきません^^;; う〜む,どういった真相が待っているのか,楽しみです。

 さて白霊山に集う犬夜叉一行をはじめとするメイン・キャラの面々…殺生丸(&りん邪見),鋼牙(と,いまだに名前のない(笑)ふたりの子分),琥珀・神楽・神無,そしてその白霊山に中心にいるらしい奈落…ここまで来ると,いよいよ最終決戦近し,という予感がするのは,はたしてわたしだけでしょうか?(マニア的ないやらしい見方をすると,『うる星やつら』全34巻,『らんま1/2』全38巻という,これまでのヴォリュームとにらみ合わせても,「そろそろ,エンディングへ向けたエピソードがはじまるのに,いい頃合いかな?」という気がしますし^^;;)

02/08/02

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