高橋留美子『犬夜叉』25巻 小学館 2002年

 七人隊・霧骨の毒に冒されたごめたちは,偶然見つけた寺に逃げ込む。しかしその寺もまた七人隊のひとり煉骨によって乗っ取られていた。刻一刻と死が迫るかごめたち。執拗に犬夜叉を追う七人隊の銀骨。炎に包まれた寺から,犬夜叉はカゴメたちを救い出せるのか?

 前巻からの「極悪七人隊編」の続きでありまして,本巻全編,七人隊との戦いで費やされています。サディスト変態の(笑)蛇骨,容貌に劣等感を抱えまくっているカエル男霧骨らに加えて,「人体是すべて武器」みたいな銀骨やら,口から火を吐く煉骨,さらには二重人格で,穏やかで献身的な医師である一方,じつは七人隊の頭目である睡骨と,これで七人隊のうち6人が登場です(といっても,凶骨・霧骨は,前巻・本巻でやられてしまうので,4人ですが)。最後のひとりはいつでてくるのかな?
 いずれも「特撮ヒーローもの」に出てきそうな悪役のサイボーグというか改造人間といった感じのノリで,おまけに戦車みたいな兵器まで登場,思わず「どこが戦国時代やねん!」と突っ込みたくなります(笑) 妖怪変化の類であれば,「そ〜ゆ〜設定」ということで,あまり気にならないんですが,戦車とかいったメカ系が出てきてしまうと,これまでのテイストとちょっと違和感があり,「いかがなのものか」といったところがありますね。もしかしてネタ詰まり?などと邪推してしまいます(どうせなら,もっと奇抜な妖怪を出してほしい)。

 で,ネタ詰まりといえば,じつはわたしも一緒です(笑) 本巻は犬夜叉一行vs七人隊の戦いを描いたアクション・シーンがてんこ盛りなのですが,この手の展開は,じつに感想文が書きにくい(^^ゞ
 新人作家さんや,わたしがはじめて読む作家さん,あるいは新連載の作品であれば,その絵柄のタッチやコマ割りの巧拙,ストーリィの展開のさせ方とか,はたまた前作との比較などなど,それなりに「切り口」はあるんですが,言うまでもなくこの作家さんは大御所中の大御所,おまけにこの作品もすでに25巻目と,『うる星やつら』『らんま1/2』のヴォリュームに迫る勢いです。
 ですから,もうさすがに新しい「切り口」を探すのが難しい。アクション・シーンは,安定した技量というか,「型にはまった」というか,いまさら新しい突っ込みを入れるのはなんですし,かごめたちが命をとりとめて,犬夜叉がはじめて涙を流すシーンや,ラスト,弱った桔梗を抱き上げる犬夜叉に複雑な気持ちを抱くかごめの姿なども,これまでの展開からすればごく自然なもの。あるいは,霧骨の毒から回復するために冥加じじいが与える「薬」に「なんかかえって気分が悪くなった」と涙を流すかごめたちも,お得意の「小ネタギャグ」といったところでしょう。

 というわけで,本巻は,後半に白霊山という「どんな悪人の汚れも浄化する霊山」が,ちょろりと出てきて,次への展開を予想させるものがあるとはいえ,またアクション・シーンたっぷりでテンポ良くサクサク読んではいけるものの,ストーリィ的にはやや起伏に乏しい1巻だったのではないかと,自分の文章能力の非力さを棚に上げて(笑)思うのでした……なんか,感想文というより言い訳に終始してしまいましたね,今回は(..ゞ どうもすみません(_○_)

02/05/11

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