高橋留美子『犬夜叉』24巻 小学館 2002年

 「鬼の首城」に乗り込んだ犬夜叉一行に襲いかかる巨大な鬼。だがそれは鬼が見せた幻影に過ぎなかった。弥勒を,城の地下に導いた“姫”こそ,鬼の本体だったのだ! 邪気に身動きが取れない弥勒と珊瑚に危機が迫る……

 というわけで,まずは前巻からの続き「鬼の首城編」です。ストーリィ展開としては,本作品ではよく見る感じがしますが,このエピソードのおもしろさは,キャラクタでしょう。そう,弥勒をして,「ある意味,ものすごいお人だ」と言わせた(笑)祓い屋のばあさん。たしかに邪気をまったく感知しなかったら,それはそれで「強み」になりますよね(現実社会でも,「鈍感さ」は,ときに強力な「武器」になったりしますし^^;;)。やっぱりこの作者,この手の,妙にとぼけた老人キャラを描かせると巧いですよね。

 おつぎは「猿神さま編」。「犬神」と間違えられた犬夜叉,村人から猿退治を頼まれるが…というお話。要するに「犬猿の仲」という俗諺が元になっているようですが^^;;,ハードな展開の中に「ポン」と入れられたコメディ・タッチのエピソードです。で,出てくる3匹の小猿。彼らの行動パターンを見てて思い出したのが,『うる星やつら』に出てきたラムたちの中学の後輩じんじゃあ・しゅがあ・ぺっぱあの悪童トリオです。せこくて,まぬけてて,それでいて,どこか憎めない,そんなキャラクタですね。
 しかしこのエピソードによって,犬夜叉たちの行き先が決められます。漬け物石にされていた(笑)猿神さまは,「邪気」の消えた方向を「丑寅」と言います。今で言えば東北,「鬼門」ですな。さらに「消えた」という言葉は,奈落が「異世界」へと入っていた可能性が示唆されています。犬夜叉と奈落との因縁の対決は,この世を離れた異世界で繰り広げられるのでしょうか?

 さて本巻後半は「極悪七人隊編」です。かつて暴威をふるった野武士集団“七人隊”が,「四魂の玉」の欠片を仕込まれ,ゾンビとして蘇るというエピソード(そういえば唐沢なをきのマンガで,死んだ「七人の侍」を,村人たちがゾンビとして蘇らせたら,村が全部ゾンビ化してしまうというのがありましたね(笑))。前2編は,奈落の「消失」によって妖怪が活性化するという設定でしたが,こちらは,どうやら奈落の「置きみやげ」のようです。
 最初に登場した兇骨は,少々「体力バカ」という感じで,鋼牙によって,わりとあっさり倒されてしまいますが,つぎの蛇骨,どうやらホモな上に,サディストという「変態野郎」です(<あくまで犬夜叉のセリフですからね^^;;)。涼しい顔をして人を斬殺していくところは,人間というより妖怪に近い感じがしますね。一方,「毒霧」を操る霧骨は,この作者お得意の「カエル顔」(笑) 蛇骨を追う犬夜叉と別れたかごめたちに襲いかかります。彼女たちの運命は如何?というところで次巻です。

 ところで,蘇った七人隊,顔になんだかメイクしたような隈取りがあるんですが,それを見て「かつてのロックバンド「KISS」みたいだ」と思ってしまったわたしは,もういいかげん歳なんでしょうね(笑)

02/01/09

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