高橋留美子『犬夜叉』23巻 小学館 2001年

 殺生丸の従者りんが奈落によって誘拐された! おのれの結界に殺生丸をおびき寄せ,奈落はなにを目論むのか? 一方,奈落の臭いをかぎつけた犬夜叉も,城へと乗り込む。いま,犬夜叉,奈落,殺生丸・・・因縁浅からぬ三者が相まみえる・・・

 本巻前半は,「犬夜叉・奈落・殺生丸三つ巴編」です。りんをさらい,みずからの結界へと殺生丸を引き込んだ奈落は,殺生丸をおのれの肉体へと取り込もうとします。しかし,そこに現れるはずのない,結界に入れるはずのない犬夜叉が参戦,さあて,いよいよ因縁のバトル勃発か! と思いきや,奈落はあっさり撤退。
 ちと肩すかしの感でしたが,むしろ「見せ場」は,本エピソード後半でしょう。奈落の操り人形と化している琥珀を使って,りんを殺させようとする奈落。もし琥珀がりんを殺せば,琥珀が殺生丸に殺されるのは必定。まさに犬夜叉が言うように「どう転んでもみんながいやな思いをする仕組みだ」というわけです。この姑息さ,このいやらしさ,この憎々しさは,まさに奈落の本領発揮! という展開のエピソードですね。

 そして姿を消し,気配さえも消し去った奈落はいったいどこへ行ったのか? 奈落の「城」に残っていた妖怪曰く,「(奈落は)何人たりとも手出しできぬ場所に逃げ込んだ・・・」。奈落の力の源泉は,さまざまな妖怪を我が身に取り込んで,強力になっていく点にあります。繰り返される陰湿な策は,それまでの「時間かせぎ」というようなところがないわけではありません。ならば,「誰も手出しをできな場所」で,奈落は新たな鋭気(?)を養っているのでしょうか? そしてその「場所」に,犬夜叉が,殺生丸が,鋼牙が,そして桔梗がたどり着くとき,ファイナル・ステージが待ち受けているのでしょうか? う〜む・・・気になるところです。

 ただ,奈落が消えたことで,いろいろな妖怪が活動を再開している様子。しばらくはそちらの方のエピソードが続く気配もあります。そのはじまりが「鬼の首城編」です。退治した鬼の首を埋め,その上に建っている城−鬼の首城−で,鬼が復活しているという。そこに乗り込んだ犬夜叉たちは・・・というお話。どういう展開になるかは,次巻以後を待たねばなりませんが,本エピソードで,この作者お得意の「一癖も二癖もある老人」が,またまた登場します。鬼の邪気が満ちている城で「けろり」としているこの老婆,果たして「力」があるのかどうか,そのくせ妙に自信たっぷりのところがいいですね。

 ところで,本巻中盤,かごめが現代に戻る短い挿話が入りますが,彼女を追ってきた犬夜叉,なんだかすっかり馴染んでますね(笑) 風呂上がり,かごめの弟に髪を乾かしてもらっている犬夜叉に,お母さんが「ごはん食べる?」と声をかけてます。をいをい,自分の娘にこんな変なボーイフレンドがいたら,普通の母親だったら心配するぞ(笑)

01/11/24

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