高橋留美子『犬夜叉』21巻 小学館 2001年

 「や,やかましい。よしんば惚れていたとしても,桔梗とかごめの間をウロウロしとるおまえに言われる筋合いはないわいっ」(本書 七宝のセリフ(爆笑))

 さて,なぜかショート・エピソードの多い第21巻です。まずは「石の花編」。子狐妖怪の七宝が偶然助けた少女さつきは,四魂の玉を用いて,死んだ兄を蘇らせようとするが・・・というお話。本作の「一服の清涼剤」的な存在である七宝を主人公とした,おそらくはじめてのエピソードですね。少女を助けようとする七宝の姿が,かわいくも凛々しいです。七宝の「男が上がった」という感じなんですが,中扉の七宝の顔立ち,「男」というより「少女」みたいな印象を受けます。手塚治虫『どろろ』のように,もしかしたら七宝は,自分を男と思いこんでいるけどじつは・・・なんてことはないでしょうね?(<穿ちすぎかな?^^;;)

 つぎは「鋼牙神楽激突編」でありますが,どうもこのエピソード,終盤へ向けての伏線的な感じがしないではありません。半妖である奈落の妖力が弱まる間,奈落の分身神楽は,鋼牙の「四魂の玉」を奪って,殺生丸に接触,奈落から逃走を図ります。彼女はまた,犬夜叉が,朔の夜に人間に戻ることに気づきますが,奈落から逃れるための「保険」として,その秘密を自分の胸に隠します。いずれの「事件」も,このエピソードだけでは終結せず,なにやら「次の段階」へと繋がっていきそうな気配です。やはり「最終決戦」では,神楽の立ち回りが重要な要素になりそうな感じですね。さてさて・・・

 「妖犬姫編」は,これまでもいろいろと匂わされてきた弥勒珊瑚との関係がメインです。弥勒に惚れている珊瑚でありますが,弥勒の「スケベぶり」にいまひとつ信用がおけない彼女,山中の女妖退治に向かう弥勒に,強引についていくが・・・というお話。こういった男勝りで,ストレートに自分の恋愛感情を出せない少女のキャラクタを描かせると,この作者はやはり巧いですね。「ほかのどんなおなごよりも・・・おまえに心配されるのが一番嬉しい」と,弥勒の気障なセリフに顔を赤らめる彼女,じつにいいですね。でも,そのあとにすんなりとハッピー・エンドにせず,ギャグで落とすところも,この作者らしいか(笑)

 この巻,最後は「顔のない男編」。新しい奈落の分身の登場です。どうやらこの妖怪,自分が何者か知らない様子。それでいて,殺戮を繰り広げ,それを「楽しい」と言いのけてしまう,なんともデンジャラスな性質のようです。まだ未完ながら,久しぶりに無表情で残忍な妖怪の登場といったところで,次巻の展開が楽しみです。

01/07/05

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