高橋留美子『犬夜叉』18巻 小学館 2000年

 獣郎丸&影郎丸を,鋼牙との絶妙な(?)コンビネーションで撃ち破った犬夜叉。一方,桔梗から,自分の心の中に,彼女を慕う鬼蜘蛛の心が残っていることを指摘された奈落は,彼女へ攻撃を仕掛ける。逃げる桔梗は犬夜叉と再会し,かごめは,ふたりの抱き合う姿を見てしまう・・・

 本作品は,「四魂の玉」をめぐる争奪戦を描いた冒険活劇であるとともに,犬夜叉・かごめ・桔梗・奈落の間に繰り広げられる愛憎劇という側面を持っています。後者の点で,本巻はひとつのクライマクスを迎えたのではないかと思います。
 犬夜叉と桔梗との深い絆,けっして途切れることのない絆に直面し,みずからの犬夜叉への深い想いに気づいたかごめ。彼女は思います。

「桔梗なんていなくなってしまえばいいのに―――」

 人を愛するということは,ときにきれい事だけではすまされないことがあります。愛は憎しみを呼び起こし,自分でさえ思いもよらなかったダーク・サイドの感情と向き合わざるをえないこともあります。それは「少女の恋」から「女の愛」へと変化する瞬間なのかもしれません。しかしかごめは,そんな自分の「闇」を抱え込みながらも,決心します。

「犬夜叉と桔梗の絆は絶対に断ちきれない。それはわかっている。だけどね,犬夜叉。私は思ったの――あんたと私が出会ったのも偶然じゃない。私は犬夜叉に生きててほしい」

 「死ぬこと」によってしか成就しえない桔梗の愛に対して,「生きること」に希望を見いだすかごめの愛――そのコントラストが描き出されるとともに,桔梗への想いを抱えた犬夜叉を,そのまま丸ごと愛そうとするかごめの姿が描かれています。
 そんな,せつなくも毅然とした彼女の姿からは,この作者の代表作のひとつ『めぞん一刻』の,ある美しいシーンが思い出されます。響子との結婚が決まった五代は,彼女の前夫惣一郎の墓前を訪れ,語りかけます。

「初めて会った日から響子さんの中に,あなたがいて・・・そんな響子さんをおれは好きになった。だから・・・あなたもひっくるめて,響子さんをもらいます。」

 五代とかごめという性別の違いはあっても,相手の「現在」だけでなく「過去」をもまとめて愛そうとする彼らの姿に,この作者が理想とする「愛の形」が現れているのかもしれません。

 さて,本巻末尾,死んだはずの珊瑚の弟琥珀が再登場します。かつて奈落に操られ,犬夜叉たちを襲った彼は,記憶を失い,身体に埋め込まれた「四魂の玉」の力で生きながらえています。その「四魂の玉」を奪取しようと,奈落の分身神楽が,琥珀と再会した犬夜叉たちに襲いかかりますが,どうやら,その背後には,人の心を玩ぶことに長けた奈落の陰湿な陰謀が隠されている様子。はたして,いかなる「罠」が用意されているのか・・・ということで,以下次巻です。

 ところで,いまだにアニメ版『犬夜叉』を見る機会がありません(T_T) 放映日の月曜はなんやかや仕事が入って,帰宅するのがどうしても遅くなってしまうんですよねぇ・・・(°°)

00/10/24

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