高橋留美子『犬夜叉』14巻 小学館 2000年

 “風の傷”を見切った犬夜叉の鉄砕牙が,殺生丸に襲いかかる! が,兄ゆえに鉄砕牙を振り切れなかった犬夜叉,そして剣圧から殺生丸を守った天生牙。ふたりの兄弟の確執はいったいどこへ行くのか・・・

 というわけで,前巻から続く「鉄砕牙の秘密―風の傷編」であります。といっても,この兄弟の反目,この程度で片がつくはずもなく,新たな展開への予兆を秘めながら,三度,痛み分けといったところです。
 そう,予兆とはまず天生牙。「やさしい心」を持たねば使いこなせないという,その刀を,はたして殺生丸はどう使うのか? そこらへんが,これからの目玉のひとつとなりそうな気配です。犬夜叉vs奈落の闘いに,なんらかの形で関わるのでしょうか? そして天生牙によって死から蘇った少女りんの行く末も気になるところですね。彼女は,殺生丸にとってのかごめになるのでしょうか?

 さて後半は,新キャラ登場,「妖狼族若頭・鋼牙編」です。
 両腕両脚に「四魂の玉」を埋め込んだ鋼牙は,狼を手足のごとく操りますが,その狼を殺した犬夜叉一行と対立,さらには,かごめが「四魂の玉」を透視できることを知るや,彼女を奪い去ります。彼を追う犬夜叉,しかし彼らに極楽鳥なる奇怪な化け物が襲いかかり・・・というお話。
 で,この鋼牙,登場早々,なんだか妙な既視感を感じてしまって,なんでかな? と思っていたら,どうも『らんま1/2』に出てくる良牙に,雰囲気が似ているように思うんですよね(まぁ,ネーミングが似ているせいもあるかもしれませんが^^;;)。
 まずは,なんといってもストレートっちゅうか,単純っちゅうか,性格的にシンプルな武闘派みたいなところがあります。そんなところは,犬夜叉と似ているところがあって,だからでしょうか,かごめを挟んでの三角関係に発展(?)してしまいます。ここいらあたりも,あかねをめぐる乱馬と良牙との関係にオーヴァ・ラップしますね。
 この作品には,いろいろな三角関係―桔梗=犬夜叉=かごめとか,犬夜叉=桔梗=奈落とか―が出てきますが,このたび新たに生まれた三角関係は,これまでのものに比べると,互いに「殺し合う」とはいうものの,陰惨さがないのがいいですね。どこかほのぼのとしています。やっぱり,かごめが言うように,鋼牙というのは,根っから悪い人じゃないみたいですからね。妖狼族のおにーちゃんたちが,どこかパンクっぽいところ見ても,不良少年たちのカシラといった雰囲気もありますし・・・。要するに犬夜叉と鋼牙,似たもの同士なのかも知れません。今回,鋼牙と犬夜叉,決着つかずに別れてしまいますが,おそらくまた出てくるでしょうね,このキャラクタ。
 それに対して,この極楽鳥の造形は,じつに不気味ですね。

 鋼牙が原因で,犬夜叉とケンカして,実家(=現代)に戻ってしまったかごめ。八宝「嫌な予感」が当たるか? それとも弥勒「バカバカしい予感」が当たるか? さてさて・・・

00/03/04

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