みなもと太郎『風雲児たち』28巻 潮出版社 1997年

 「歴史大河ギャグマンガ」の28巻です。このコミックはいつか「お気に入りのコミック」コーナーでご紹介しようと思っていますが,とりあえず最新刊が出ましたので,感想を兼ねて,簡単な紹介を。

 幕末の動乱期に活躍した,さまざまな「風雲児たち」の群像を描くことを目的として,このコミックが始まったのが15年前(ひええええ)。なんと,その初っ端は,関ヶ原の戦い。つまり幕末の260年前からです。もちろん,途中いろいろと端折りますが,それでも幕末を描くために,幕府の成立から描くなんて,そうできるもんじゃありません。今のところ28巻まで出ていて,4巻ずつ,第1期から第7期まで区分されています。

第1期:幕府誕生編:関ヶ原から会津藩の成立まで
第2期:蘭学黎明編:前野良沢・杉田玄白らによる『解体新書』翻訳の物語が中心
第3期:幕府鳴動編:高山彦九郎の尊皇運動や田沼政治の発展から崩壊まで
第4期:憂国苦闘編:松平定信の寛政の改革と大黒屋光太夫のロシア彷徨
第5期:欧亜東漸編:シーボルト事件と大塩平八郎の乱
第6期:獅子誕生編:「風雲児たち」の少年時代, 蛮社の獄,水野忠邦の天保の改革
第7期:黒船到来編:ひきつづき「風雲児たち」の成長と西洋船の来航などなど,いよいよ幕末らしくなってきています。

 さて28巻は,副題に「さすらいの長英」とあるように,小伝馬町の牢獄から脱走した高野長英の逃亡記が,前半の中心となっています。このあたり,吉村昭『長英逃亡』という小説を読んだことがありますが,なかなかすさまじい逃亡生活だったようです。
 後半は,坂本龍馬の成長記を少しはさんで,薩摩藩のお由羅騒動が始まります。このお由羅騒動というのは,幕末直前,薩摩藩を真っ二つにした大お家騒動で,幕末の薩摩藩の「進路」に大きく影響を与えた事件です。ともかく,いよいよ幕末前夜というか,風雲急を告げる時代まで,あと一歩といったところです。
 さて,あと何巻でクライマックスを迎えるやら,のんびり待ちましょう。

 なんかこういうふうに書いていると,コチコチの歴史マンガのようですが,なにしろ絵柄が基本的にギャグマンガですし,あちこちに小ネタギャグ(それも関西系(笑))が散りばめられていて,とにかく笑って読んでいるうちに,歴史がわかる(わかった気になる?)という,優れものコミックです。
 もちろん誇張やフィクショナルな部分もありますが,けっこう綿密に取材して描いているようです。どこの本屋でも並んでいるというわけでもないようですが,もし歴史ネタ,幕末ネタにご関心のある方は,ぜひご一読してみてください。

97/05/02

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